【愛の◯◯】由貴子ちゃんの怒りとまなみちゃんの喜び

 

夜。マンション部屋のソファ。

「くたびれちゃったわ。くたびれちゃったから、サークルの愛すべき後輩女子の近況をあなたに報告してあげる」

アツマくんに寄りかかりながら言うわたし。

「敦賀由貴子(つるが ゆきこ)ちゃんが、新山(しんざん)ブンゴくんと野球を観に行った。言うなれば、『ボールパークデート』」

「それはいつのハナシなんだ? どの球場で、どのチームとどのチームの試合を? そもそも、『ボールパークデートしよう』と言い出したのは、どちらから……」

瞬速で遮り、

「5W1Hみたいなのは、どーだっていいのよ」

「おいコラッ」

「いちばん重要なのはね、試合が終わったあとに起こったコトなのよ」

「いったい何が起こったというのか」

「球場を出たあとの帰り道で、由貴子ちゃんが、ブンゴくんのふくらはぎに強烈な『蹴り』を入れたんだって」

戸惑い気味の眼つきになるアツマくんが、

「確か、由貴子さんの方が、ブンゴくんより、学年が下……だったよな」

「上下関係なんか、あって無いようなモノ」

わたしはそう言ってから、アツマくんの右腕を『ぐねり』とつねり始めて、

「ねえ。あなたは、由貴子ちゃんがどうして暴力的になったんだと思う?」

 

× × ×

 

「これ、由貴子ちゃんから伝えられたんだけど――小松(こまつ)まなみちゃんがね、高校の後輩男子と相当進んでるらしいのよ」

小松まなみちゃんは、敦賀由貴子ちゃんと同学年で、仲良し。

「ゼ◯テリアってあるでしょ、ゼ◯テリアって」

「あー、ロ◯テリアが某グループにブッ潰されたんだっけか」

「あなたはわたしにグーパンチを喰らいたいの!?」

「え、なにゆえ急に怒り出す」

「あと1回誤解を招く発言をしたら、即刻、わたし特製のグーパンチよ」

「えー」

右隣のアツマくんに掴みかかるのをガマンできないわたしは、

「ゼ◯テリアが『舞台』の目撃情報を、由貴子ちゃんが仕入れてきてくれたのよっ!!」

ポカ~ンとした顔の彼氏の上半身を揺すりながら、

「都心某所のゼ◯テリア店内。まなみちゃんとまなみちゃんの後輩ボーイの海也(かいや)くんって子が、ふたりだけで向かい合い。特に、まなみちゃんの方の表情が、誰にも見せたコトのないような喜びに……!!」