【愛の◯◯】歳時記と鼓動

 

塚本邦雄(つかもと くにお)の短歌を読んでいる。勅撰和歌集ばかり勉強しているワケではないのだ。

『いつかはわたしも、こういう韻律の歌を詠んでみたいな……』

ココロの中でしみじみと呟きつつ、歌集を閉じる。

上がった目線が、タンスの上に置かれていた俳句歳時記をとらえる。

昼間、丸田吉蔵(まるた よしぞう)くんから無償で提供された。『プレゼントなんだ』と言い張った丸田くんは、歳時記を差し出す時、なぜだか、恥じらうような表情になっていた。

丸田くんが恥ずかしさのようなモノを呈示してくるのは珍しい。

だから、なんだろうか? 彼のキモチに応えてあげたいキモチが膨らんできて、腰を浮かせて、わたしは俳句歳時記の許(もと)まで歩み寄った。

 

俳句歳時記を勉強机の中央に置き、椅子に再び腰掛ける。

表紙に眼を凝らした途端に、

『とくん』

という小さな心音が耳に響いた。

わたしはわたしの『とくん』に少し戸惑ってしまう。強張る両手。特に、利き腕の右手が強張ってしまって。

大仰に息を吸って、歳時記を開こうと右手指を近付けていくけど、ページをつまんだ手指には明らかにチカラが入り過ぎていた。

暦の上では夏だから、夏の季語を見る。

「薄暑」。「短夜」。「麦の秋」。「風薫る」。「青嵐」。それ自体が文学的な色彩を帯びているコトバが並んでいる。

そして、そういったコトバに眼を通していくに連れて、自分自身の心音の高鳴りを制御する方法を見出だせなくなっていく。

どくどくどくどくどくんどくん。

……意味が分かんない。わたしのココロを暴れさせるモノは、いったい何!?

熱いよ……顔が。

冷房代、節約したいのに。