あのっ、私、せっかくこのお邸(やしき)に来たので、蜜柑さんに訊いてみたいコトがあるんです。
蜜柑さんって、どんな小学生だったんですか?
……やっぱり、ビックリしちゃいますよね。いきなり『どんな小学生だったんですか?』なんて訊かれたら、ビックリしちゃう人は多いと思います。
だけど私、蜜柑さんのコトが、もーっと知りたくて。
知りたい理由は……そうだな、蜜柑さんと出会ったコトが、『運命的な出会いだった』って思ってるから、かしら。
引いちゃいますか? こんなコト打ち明けたから。
……そうですか、ありがとうございます、『小百合(さゆり)さんが、わたしと出会えた喜びを強調してくれるのは、純粋に嬉しいです。ドン引きなんてしないですよ』って言ってくれて。
じゃあ、今の蜜柑さんなら、ご自身の小学生時代についてだって、語ってくれますよね?
あーっ。
ドン引きはしないけど、前のめり姿勢にはなっちゃいますかー。
躊躇(ためら)いがあるみたいですね、少し。無理も無い。
だったら、こうしましょっか?
蜜柑さんが蜜柑さんの小学生時代について語ってくれた後で、私も私の小学生時代について語る。
これで「おあいこ」。
距離を、詰めたいんです。蜜柑さんとの距離を。
『これ以上詰めてどうするの……』ってツッコまれるのも「覚悟」の上です。
邪(よこしま)ですか? イヤらしいですか?
――あ、そこは、首を横に振ってくれるんですね。
だったら。
お話してくれる気にも、なれますよね?
× × ×
ありがとうございました。
貴重なお話、いっぱい聴くコトができました。ハッピーです。リスペクトが5倍以上になってます。リスペクトってのは当然、蜜柑さんに対するリスペクト。私、『これ以上リスペクトされると困っちゃう……』ってキモチには、なってほしくないかな。
アカ子さんと大喧嘩しちゃった時のエピソードが、特に面白かったです。アカ子さん、小さな頃から気が強かったんですね。だから、大人になった今、アルコール飲料にあんなに強いのかも。……これ、アカ子さんが在宅だったら絶対に言えないコトなので、彼女が不在の時にどうしても言っておきたくて。
――あっ。腕を組んでマジメ顔になるってコトは、『小百合さん、できるだけ早くあなたからも『開示』してほしいわ……』ってキモチの顕(あらわ)れってコトですよね?
よろしゅうございます。私の小学生時代も、今から開示してあげますから。
それにしても、メイド服を着て腕組みする蜜柑さんって、ステキの中のステキだな。
……はい。
『焦(じ)らさないで!』と言われてしまったので、焦らさないコトにします。
× × ×
というワケで、私が『教室の中で、限りなく中心に近いトコロに居た』証拠になるエピソードを、3つ話したワケなんですけども。
イヤらしくはないけど、自慢話の成分が濃(こ)ゆかったし、エピソードを3つも聞かされてしまって、蜜柑さん、イヤになっちゃったかしら。
……嬉しいです、『イヤではありませんから』って応えてくれて。
小学5年の時点まで話しましたよね?
実は、ここからが、私が伝えたい「核心」なんです。
というのは。
私は、クラスの中心的存在であり続ける一方で、学年が上がっていくにつれて、『怖い』キモチが増していったんです。
『怖い』、っていうのは。
ちょっぴり、デリケートかもしれないけど……本格的に感じてしまうようになるじゃないですか、小学校高学年にさしかかってくると、『オトナになる怖さ』を。
男子より女子の方が、発育、早いですから。
……蜜柑さん、また、前のめり姿勢になってる。思い当たってるのかしら?
……そうですかぁ、『わたしが早熟だったなんてあなたが思い込んでるとしたら、それは間違いだわ?』ですかぁ。
すみません、軽率で。
成長に個人差アリ。――これもまた、真理。
私と蜜柑さん、同じような身長で、『高身長女性』にカテゴライズされちゃう数値で。
だけど、167センチの私と168センチの蜜柑さんの間には、僅かではあるけれど、成長の個人差があったみたいですね。
やっぱし、イヤらしいハナシかしら。
でも、伝えておきたいので、伝えさせてください。
私ですね、小学6年生の時、クラスの女子で2番目に背が高かったんですよ。もしかしたら、男子を含めてもナンバー2(ツー)だったのかも。急に声が低くなった男子とか、クラスに居た記憶ありませんし。
なるほどなるほど、蜜柑さんが小学6年の時は、女子の中で「3番目」の背丈だったんですね。
あーっ、なるほどなるほど、スポーツ万能で既にかなり大柄だった男子がクラスに居たから、全体としては「4番目」に甘んじていたと。
失礼だったですね、『甘んじていた』なんて言って。謝ります。
ですけど、良かったです。
何が良かったかって言うと――私と蜜柑さんの間の、「成長曲線」の微妙な差異を、実感するコトができたから。
もちろん、私のデリケートな「ぶっちゃけ話(ばなし)」は、これで終わりじゃなくって。
もう少しだけ、「ぶっちゃける」お時間を頂きたいトコロでして――。