【愛の◯◯】トヨサキくんは校内放送で『自立』できない

 

「きん!

 よう!

 びー!!

 

 みなさぁん、おはようございます、じゃなかった、こんにちはーーー!!!

 

 金曜日のお昼休みだからかウキウキ気分の本田くるみです!! 校内放送『ランチタイムメガミックス』を始めていきます!!

 

 はい、トヨサキくん、きみも挨拶挨拶!!」

「……どーも。トヨサキです」

「どーしてそんなに覇気が無いの!? アレなの!? 八百長なの!?」

「変な表現はやめてくださいよ」

「あのねえ、トヨサキくんは本来、わたしのアシスタントなポジションに甘んじてちゃダメなんだよ?? 入学してからもう7ヶ月以上経ってるんだから、そろそろ『自立』してもらわないと、単独パーソナリティになってもらわないと……」

「すみません、チカラ不足で」

「誠意が無い。」

「……。おれ、ひとつ、質問が」

「なによっ」

「くるみ先輩は、放送部の部長に就任しましたが。今後は、放送部の側からは、くるみ先輩を中心にして『ランチタイムメガミックス』に関わっていく感じなんですか?」

「あー、だいたいそんな感じだよ。3年の紅葉(もみじ)部長やモネ先輩は流石にご隠居。トヨサキくんがタカムラちゃんと違ってだらしない内は、わたしが中心になって番組を牽引していきたい」

「タカムラの名前を出さなくたって……」

「だってトヨサキくんはタカムラちゃんに負けてるじゃん」

「勝ち負けってそんな大事ですか」

「放送部の部長に逆らうなっ」

「ななっ」

「わたしの伝家の宝刀たるデコピンを発動されたいかっ」

「で、デコピンは、大谷翔平のペットでじゅうぶんですっ」

「フフフフ」

「なんですかその奇妙な笑いは!?」

 

× × ×

 

「これ以上トヨサキくんをいじめてると、昼休憩終わっちゃいそう。無念だな」

「何が無念なんですか、何が」

「ねー」

「ハイ?」

「わたしの下駄箱にハガキが入っていて、そのハガキには楽曲のリクエストが書かれていたの。今そのハガキ渡すから、曲名読み上げてくんない?」

「分かりましたが。

 んー……。これですか。

 あの、ずいぶんと懐メロですよね、これ。懐メロは毎度お馴染みというか、なんというか。生徒じゃなくて先生が、リクエストを?」

「どうしてすみやかに曲名を読み上げないの!? お姉さん怒るよ!?」

「くるみ先輩、声が大きいです」

「校内放送パーソナリティの声が小さい方が問題だよ!! トヨサキくんには、まだ分からないの!?」

「……しょうがないな。

 くるみ先輩が怖いので、曲名言います。

 B'zで、『熱き鼓動の果て』。

 生徒は全員、産まれてない時の曲ですよね……」