「利比古」
「なあに? お姉ちゃん」
「あんた言ってたわよね。『KHKが復活したみたいだ』って」
「あー、そうそう。そうみたいなんだよ」
「KHK。略さないと『桐原放送協会』。あんたが桐原高校に通ってた時代に入ってたクラブ活動」
「説明ありがとう」
「どこからKHK復活の情報を入手したの?」
「どこからともなく」
「ちょ、ちょっとっ。『どこからともなく』じゃないでしょっ」
「そだね」
「ハンサム顔に似合わない不真面目さはイヤよ……?」
「わかったわかった、お姉ちゃん」
「それで、KHK復活の情報源は、結局……」
「教えてあげるから、もっとぼくに近付いてきてよ」
「えっ!?」
× × ×
「なるほど。そういうルートで情報が来たのね」
「うん」
「わたしの耳元でささやいて答える必要も無かったと思うけど」
「ま、細かいコトは良いでしょ」
「なーんか、ちゃらんぽらんね」
「そう思う?」
「あんたも8月にはハタチになるんだから、もっと気を引き締めた方が……」
「ねえ、おねーちゃん」
「わ、わたしの話遮らないでよ」
「KHKは放送系のクラブ活動だったワケだけど」
「……?」
「放送つながりで」
「な、なに」
「お姉ちゃんは、アナウンサーに興味があったりしないの?」
「そっそれってどーゆーいみ!?」
「就職先だよ」
「わたしに……女子アナになるのを……すすめる気?」
「だーって、ルックス完璧だし、複数の外国語ペラペラだし、何よりお姉ちゃんは声が素敵じゃないか」
「『声が素敵』だなんてあんたに言われたの……たぶん、初めて」
「そうだっけ。ともかく、アナウンサーの道を歩んだら、やがては人気キャスターとして引っ張りだこになりそうだよね」
「わたしは、なるつもりなんか、無いわよ?」
「エーッ」
「弟のあんたなら分かるでしょ。チヤホヤされるのは好きじゃないって。人気キャスターにまつり上げられるとか、絶対にイヤ」
「ふーん」
「む・し・ろ」
「え、どーしたの」
「利比古、あんたこそ、アナウンサーに向いてるんじゃないの!?」
「えええ、なにそれ」
「ルックス完璧だし。帰国子女で、わたし以上に英語ペラペラだし」
「ぼく喋るのあんまり得意じゃないよ」
「喋りのスキルはアナウンサーになってからでも何とかなる」
「無茶を言わないで」
「無茶なんか言ってませんからっ」
「……あのね、お姉ちゃん」
「なんなのよ、頭をポリポリ掻いて、照れくさそうに」
「ぼくも、本質的には、お姉ちゃんとおんなじなんだ」
「はい!?」
「チヤホヤされるのは……ハッキリ言って、苦手だ」
「ばっバカっ、バカ利比古」
「『バカ』を連発しちゃダメだよ。品が無くなっちゃうよ。お姉ちゃんらしくも無い」
「あんたのためなら品だって無くなるわよ!!」
「やれやれ。」