「川又さん、今日は短縮版よ」
「短縮版ですか。分かりました、羽田センパイ」
「サクサクと」
「はい。サクサク、ですね」
「美味しいロースカツの衣のごとく」
「あはは……」
「川又さん」
「なんですか」
「あなたと短縮版やるのって、もしかして初じゃない?」
「羽田センパイとわたしのコンビで短縮版を担当するのが、初めてだってことですか?」
「まさにそうよ。あなたってやっぱりお利口さんなのね☆」
「……。
初めてであるかどうかは、正直分かんないです」
「ま、それも仕方ないか」
「このブログの歴史もそこそこ長く、『短縮版』の歴史もそこそこ長いじゃないですか。なので」
「確かに☆」
「センパイ……。なんだかいつも以上に、ぴかぴかしてる」
「え!? ぴかぴか!?!?」
「光ってて眩しいってことですよ」
「保湿効果かしら」
「……どうでしょう」
「川又さんはさっき、歴史がそこそこ長い、とか言ってたけど」
「?」
「あなたとの出会いからも、相当時間が経ってるってことよね」
「あー。そうですよね」
「文芸部で一緒になったから、仲良くなった」
「何年前でしたっけ」
「4年前よ。あなたが高等部に上がって、文芸部に入ってきて」
「わたしが1年で、センパイが2年だった」
「そう。わたしの、17の年。わたしが一番きれいだったとき」
「ちょ、ちょっとっ、センパイっ」
「えー?? どうして慌ててるのよ、川又さん」
「安易に茨木のり子の詩のタイトルを持ってきちゃダメですよっ」
「そーかなあ」
「それに、そもそも!!
センパイは、センパイは……現在進行形で、『一番きれい』でしょっっ」
「ホホーッ」
「……」
「嬉しいこと、言ってくれるわね」
「言いますよ……」
「そんなに俯(うつむ)かなくても。恥ずかしいの?」