「お姉ちゃん、今日は短縮版だよ」
「そっかー。
管理人さんからの伝言ね? 利比古」
「そうだよ」
「いったいどういった方法で管理人さんが伝言を伝えてくるのか。そこは依然としてブラックボックスなんだけど」
「アハハ、そうだね。だけど、細かいことはいいじゃんか」
「利比古も不真面目ね」
「お姉ちゃんほどじゃないよ」
「ちょ、ちょっとお」
× × ×
「あのねお姉ちゃん。ぼく、羽田家の昔のアルバムを発見したんだ」
「昔って、いつ頃よ」
「ぼくもお姉ちゃんも小学生の頃だね」
「そんなアルバムがどうしてお邸(やしき)に」
「お父さんとお母さんが明日美子さんに預けたんじゃないの?」
「――なるほど」
「それでね。
小学生時代のお姉ちゃんの写真、いっぱい収められてたんだけど」
「けど?」
「可愛かった」
「か、か、かわいかった?? わたしが!? わたしが!?」
「『そりゃあ、あんな美人に育つよな』って思いながら見てしまった」
「……あんたはどういう目線でアルバムを見てたの」
「だって、ほんとーに可愛かったんだし」
「わ、わたし、小さい頃はむしろ、男勝りで」
「でも男子にモテてたでしょ」
「ど、どうして断言できるのっ」
「絶対モテてた。間違いないよ」
「しょ、小学生時代よ!? 男子がそんなに女子を意識するなんてこと――」
「ぼくはね、」
「――なに??」
「お姉ちゃんが好きだった男子、小学校に少なくとも3人はいたと思う」
「!??!」
「テンパってるね」
「『3人』っていう数が生臭(なまぐさ)すぎて……怖いんだけど」
「ぼくは名前も憶えてるよ? 同じ小学校に通ってたし」
「ぷぷぷプライバシーを侵害しちゃだめよっ、利比古っ!」
「わかってるって」
「……」
「ぼくだって、そこまで生臭(なまぐさ)くないんだから」
「……」
「実名なんか挙げるわけない」
「……。
あんたもあと1週間で大学生なんだし、もう少し真面目にならなきゃダメよ?」
「わかってる、わかってる。
とりあえず、生臭(なまぐさ)さを払拭する」
「……利比古……」
「頭を抱えなくたって」