【愛の◯◯】「さやかちゃんが悪いのよ」

 

「利比古くん、ここの設問、全問正解よ。よくできました」

ニッコリ笑って言うアカ子さん。

全問正解か。

やった。

「自信を持って。これなら、第一志望も楽勝だわ」

ともアカ子さんは言う。

「今日は世界史は十二分にできたし――よくできましたのご褒美(ほうび)に、休憩タイムにしましょうか」

とも。

アカ子さんの休憩タイム突入宣言の直後に、逆サイドのさやかさんが、

「アカ子ぉ」

「? なによ、さやかちゃん」

「休憩タイムにするのは、いいんだけど…」

「…えっ」

アルコールは、ダメだよ?

 

「……ば、ば、バカなこと言うものじゃないわさやかちゃん。利比古くん18歳よ。18歳なのよ!? お酒が飲めない彼の前で、アルコールだなんて……。そ、そ、そもそもね、どういう思考回路で、『アルコール』なんていう単語が口から飛び出すのよっ。あまりにも唐突すぎるでしょ?! 唐突ってレベルじゃないわよね?!?! まさか、さやかちゃんあなた、そんなにも、わたしの酒飲みキャラを強調したいの!? いくらわたしが、遺伝的にお酒に激強(げきつよ)だからって……」

 

「アカ子。血管が浮き出る勢いだよ」

「だからっ、バカなこと言わないでよっ!!」

 

あのー。

 

「あのー、おふたりさん。

 休憩タイムにするんですよね。

 とても休憩タイムとは言えないような流れに、なってきてしまう気がするんですが」

 

アカ子さんが途端に押し黙った。

それから、彼女は腰を浮かせ、

「せ、洗面台、使っていいかしら?? 利比古くん」

「ぜんぜん構いませんけど、どうして」

「顔を洗いたいの」

「なぜに」

ぼくの「なぜに」をスルーして、

「顔を洗ってから、お庭の花壇を眺めて……できれば、お水をやりたいわ」

とアカ子さん。

「アカ子~~」

さやかさんが、

「ちょっとヒートアップし過ぎたんじゃないのー、あんた」

さやかちゃんが悪いのよ

「ええ~っ」

「さやかちゃんのせいで、せっかくの短縮版が……」

 

そうだった。

今回は、土曜日ゆえ……短縮版なのでした。