きょうは読書を少しお休みして、テレビを見ている。
巨大な画面の液晶テレビにリモコンを向け、チャンネルをザッピング。
『どの局も年末特番ですよね、あすかさん』
背後から声がした。
利比古くんだ。
「知ってますか? あすかさん」
来たっ。
利比古くんの、テレビ関連ムダ知識タイムだ。
「今夜、日本レコード大賞があるでしょう?」
「知ってる。TBSだね」
「そうです、リモコンキーIDは6」
「……」
「ご存知でしたか?? あすかさん」
「……ご存知って、いったいなにについて」
「今でこそ、レコード大賞は、12月30日ですが――」
「――むかしは大晦日だった、と?」
「ウワァッどうしてわかったんですかあすかさん」
驚きすぎだから。
ピコピコハンマー持ちたくなっちゃうよっっ。
「昭和期は、レコード大賞と紅白歌合戦の枠が重なっていなかったので、夜9時までTBS、それからはNHK総合、というのが大晦日の『王道』でした」
……。
「素朴な疑問だけどさ」
「ハイどうぞ」
「レコード大賞って、いつからあるの?」
「唱和34年。1959年からですね」
「古っ。お母さんも生まれてないじゃん」
「ただ、レコード大賞を生中継するようになったのは、1969年からでありまして――」
テレビのボリュームを下げる。
姿勢を正して、軽く深呼吸。
軽い深呼吸のあとで、間髪を入れず、
「利比古くん。あなたの2023年の課題……できたね」
「え?? ぼくの課題、ですか???」
「課題だよ。
具体的には――。
テレビ文化を語るときの、その、オタクっぽい言い回し。
言い回しを、矯正(きょうせい)すること!
――せっかくのハンサムが、台無しだよ」