「流(ながる)さん、昨日は楽しかったですね~」
「そうだね、愛ちゃん。ぼくときみとアツマの3人で、お酒を酌み交わして」
「流さんとお酒飲んだの、生まれて初めてだった」
「…どう? お酒が飲めるようになった気分は」
「ハッピーです☆」
「ハッピー、かぁ」
「ほろ酔い、っていうんですか? あんな気分に、昨日の夜は」
「…日本酒飲んでたよね、愛ちゃんは」
「人生初の日本酒体験でしたー」
「飲みにくくはなかった?」
「案外、イケました」
「すごいな…」
「まあ、炭酸に激弱(げきよわ)な代わりに、日本酒みたいなお酒への耐性が強いんだと思います」
「――いいよね、これからの季節、日本酒は」
「熱燗(あつかん)の季節、ですよね」
「そう。熱燗」
「冬が、楽しみ~~」
「……楽しみなのはわかるけど、羽目、外し過ぎちゃダメだよ」
「わかってますよお。飲み過ぎませんよお」
「お酒が飲めるようになりたての時期が、いちばん羽目を外しやすいから……」
「そんなことぐらいわかってますって☆」
「……うん」
× × ×
「書いた小説、また見せてくださいねー、流さん」
「……うん。」
「見せるの渋っちゃ、イヤですよー」
「……」
「怖がってるんですか?? わたしのダメ出し」
「……怖くないと言うと、嘘になる」
「だいじょーぶですから。
今度は、流さんをキレさせたりはしませんから」
「……あの件については、ぼくのほうが、申し訳なかったよ」
「いえいえ、わたしも悪かったです♫」
「――ずいぶん楽しそうに、自分の非を認めるね…」
「これがわたしらしさです」
× × ×
「じゃ、指切りげんまんでもしましょーか」
「小説に関しては、お互いヒートアップし過ぎない…って約束の?」
「それです。それそれ」
「約束、破ったら…」
「針、千本」
「…コワいなあ」
「コワかったら、早く指組んでください。――ほらっ」
「…愛ちゃん」
「?」
「やけにテンション高いけど、
もしかして、昨日の日本酒、まだ残ってたりする??」
「は、ハリセンボンっ」