愛らしくも麗(うるわ)しい顔立ち。
映(は)える栗色の長い髪。
――PC画面で微笑んでいる羽田愛さん。
だいぶ元気を取り戻したみたいだ。
表情が明るい。
キラキラスマイルの羽田さんだ。
「――どうしたの? 脇本くん」
おっと。
いかんいかん。
「ごっごめんね、沈黙しちゃってて」
取り繕(つくろ)う僕。
微笑みを絶やさない彼女は、
「もしかして、わたしに見とれてたの~?」
「ちっちがうちがう」
× × ×
「…イジワルなことも言えるってことは、きみもずいぶん回復してるんだね」
「わかるの? 脇本くん」
「わかるよ。もっとも、なんとなく…ってだけだけど」
「わたし嬉しいわ」
「エッ……なにが」
「『回復してるのがわかる』って言われたのが羽田さんは嬉しいんだよっ。なんでワッキーはそんなことも分かんないの!?」
後方から、3年生の高輪(たかなわ)ミナさんが容赦ないコトバを浴びせてくる。
「鈍(ドン)くさいのもいい加減にしろ、ワッキー。なぜ、とっとと本題に入らないんだ? しゃんとしろや、しゃんと。前フリで時間を食いすぎるなっ」
後方からは、やはり3年生の郡司健太郎(ぐんじ けんたろう)先輩のお説教も飛んでくる。
「脇本くん。本題って――」
「あ…ああ。本題ってのはね、きみの誕生日のことだよ」
「サークルの有志でお邸(やしき)に来てくれるのよね」
「まあ、そんなとこ」
「わたし、とってもとっても嬉しいわ。サークルのみんなが、こんなにもわたしのことを想ってくれていて」
有志…というか、抽選で決まったメンバーもいるんだけどな。
…それはいいとして、
「羽田さん。今から、お邸(やしき)訪問のメンバーを言うよ」
「おねがい」
「まずは4年生だけど、久保山(くぼやま)幹事長が行くことは最初から確定だった。サークル代表として…ね」
「なるほどぉ。4年生だと、ほかには?」
「有楽(うらく)先輩と日暮(ひぐらし)さん。クジ引いて、有楽先輩が当選したんだけど、ハズレだったにもかかわらず日暮さんが『行きたい~~』って駄々(だだ)をこねて」
「あー。日暮さんらしいわねぇ、それ」
「で、ワガママが通っちゃった」
「いいじゃないのよ、少しぐらいワガママでも。――3年生からは?」
「高輪さんと郡司先輩が」
「それもクジで決めたの?」
「いや、松浦先輩が自分から降りたんだ」
「どうしてまた」
「高輪さんは新しい幹事長に、郡司先輩は新しい副幹事長になるから。新しいサークル代表の初仕事になるから……って」
ここで松浦先輩が背後にニューッと寄ってきて、
「高輪と郡司が迷惑かけるけど、よろしくな」
と羽田さんに。
「迷惑ってなにかなーっ」と高輪さん。
「おれがなにかやらかすと思ってんのか?! 松浦」と郡司先輩。
2人を無視して、
「4日早いけど――誕生日おめでとう、羽田。当日行けないから、今言っておく」
と松浦先輩の祝福。
「ありがとうございます!」
幸せそうな満面の笑みで、羽田さんは感謝する。
× × ×
続いては2年生……なのだが、
「……大井町さんは、抽選に参加しなかった。というより、ハナから行く気が無さそうで、さ」
「そっか……そうよね……そうなるわよね……」
「な、なんか、ゴメン……羽田さん」
「いいのよ脇本くん。伝えてくれて、かえって良かったわ」
「……」
「ショボーンとしないでよお。
――あなたと新田くんで、ジャンケンでもしたんじゃないの?」
「す、するどいんだね」
「2人に1人を決めるときは――ジャンケンでしょ」
「うん。した、ジャンケン。」
「勝ったのは?」
「……新田のほうだった」
「あらら」
「……」
「それはザンネンだったわね」
「うん……」
「脇本くん、いつでもいいから、来てよ。いつでも待ってるわ」
「……ありがとう」
「だから、泣かないで☆」
「な、泣いてない泣いてない」
× × ×
1年生からは幸拳矢(みゆき けんや)。
やはり、和田成清(わだ なりきよ)とのジャンケン一発勝負になったわけだが。
成清は……ホントに泣いていた。
成清……。
明日(あした)があるじゃないか。