「利比古」
「なあに? お姉ちゃん」
「音楽を聴いてるところ、申し訳ないんだけど…」
「えっ?」
「今朝、あんたが作ってくれたゴハン……美味しかった。
だから、伝えてあげたいって……思って」
『……』
「……み、見つめ合ってると、なおさら恥ずかしくなっちゃうわよね」
「うん……ぼくのほうも少し……むずがゆかったかも」
「うん……分かる」
「だけど」
「だけど……??」
「嬉しくもあった」
「……!!」
「嬉しかったよ、ぼく。お姉ちゃんが、ぼくの朝ごはんをホメてくれて」
「利比古っ、なんてあんたはいい子なのっ」
「――貸そうか? ハンカチ」
× × ×
「けれど、本当に、あんたの料理の腕は上達してると思うわ。お料理経験値急上昇中!! って感じで」
「そっかなあ?」
「そうよ」
「…不器用だから、ぼく。お姉ちゃんみたいに上手くは、出来っこない」
「謙遜しちゃイヤよ、わたしは」
「…そっか。
だったら。
きょうの朝ごはんの中で、どれが特に美味しかったのかな?」
「んーっと、んーっとね……、ちょっと待ってくれないかしら……」
「迷っちゃイヤだよ~~、ぼくは」
「だ、だから、ちょっと待ってって!」
「フフッ」
「そ…そういう笑いかたはやめなさいよ、利比古」
「ごめーん、いじわるだったー」
「……。
目玉焼きも、良かったけれど。
それ以上に、ベーコンの焼き加減が、絶妙だったと思うわ」
「お姉ちゃんはプロだね。やっぱり」
「ぷ、プロって、なによ」
「眼の付けどころが、三ツ星シェフレベルだよ」
「えぇ……」
「ベーコンの焼き加減になんて、ふつう着目しないでしょ」
「……」
「まともに照れてるね」
「い、イジワルとしひこっ!!!」
「すねないでよー」