「あすか、きょうは短縮版だぞ」
「ふーん、そうなんだ。
お兄ちゃん、具体的には、何文字ぐらい?」
「840字程度というお達しが来ている」
「…お達しって、だれから」
「それはじぶんで考えろ」
「…。
840って、すごく中途半端な数字にも思えるけど。
アレでしょ。ツイート6回分、ってことでしょ」
「ツイート?
……あー、140字を6回、っつーことか」
「140かける6で840。小学生でもできる計算だね」
「なるほどねー。840という数字の裏には、そんな意図があったんか。
さすが管理人の野郎、日ごろTwitter漬けなだけはある」
「――お兄ちゃんは管理人さんとは真逆だよね。
Twitterやってないでしょ。それに、インスタもやってない」
「ああ。いちどもやったことなんかない」
「そして、わたしにしても、Twitterのアカウントもインスタのアカウントも持ったことがない」
「…よくできた兄妹、っつーことだろ」
「お兄ちゃんはさ、」
「んー?」
「これからも、Twitterとかインスタとか、いっさいやるべきじゃないよね、明らか」
「そりゃどーゆーことだ」
「もういくつ寝ると社会人なんだし……SNSで炎上したら、本当に取り返しのつかないことになっちゃうよ」
「……おれが炎上するような人間に見えるか?」
「ちょっぴり危険性を感じてるってこと」
「……はーっ」
「え、このタイミングで、なぜにそんな溜め息を」
「話は変わるが」
「?」
「先週に引き続き……おれたち兄妹、影が薄かったよな」
「??」
「今週も、ほぼ空気だったろ?? ぜんぜんブログに呼び出されなかった」
「……ブログに呼び出されなかったとか、直接的なメタ的発言はほどほどにすべきとして」
「……」
「たしかに、お兄ちゃんの存在感、今週も希薄(きはく)だったかもね。
わたしは昨日の記事で、存在感を発揮できたけれど……」
「管理人の野郎……えこひいきとか、してんじゃねーだろーなぁ」
「それは無いよ、お兄ちゃん」
「なぜ断言できる」
「お兄ちゃんは、ひとりでに浮上するんだから」
「浮上?!」
「管理人さんを信じて待とうよ。『野郎』とか、汚いことばを付けないで」
「……ホントに掬(すく)ってくれるんかいな」
「くれるよ。掬(すく)ってくれるし、救(すく)ってくれる」
「……。
840字、とっくにオーバーしちまったな」