【愛の◯◯】ワッパーとYK

 

あすかさんとバー◯ーキングに来ている。

 

「あすかさん、好きなの……? ◯ーガーキング」

訊くわたし。

「好きだよ。好きだし――それに、」

「それに?」

「徳山さんはさ、フレッシュネスなバーガーショップの常連でしょ?」

「た、たしかにそうだけど……小野田さんとフレッシュネスなバーガーショップに足繁く通ってることが……どうかしたの」

「フレッシュネスばっかり行くんじゃなくて、新規開拓も必要じゃん? と思って。それで、バーキンをお昼ごはんの場所に指定したんだ」

 

新規開拓。

 

「わたしも、たまには新鮮味を出したいなー、と思って。最近、モスバーガーの一辺倒(いっぺんとう)だったし」

言うあすかさん。

「フレッシュネスでもモスでもない、第3の選択肢として……バーガー◯ングを」

「そーゆーことだよ、徳山さん。呑み込み早いねぇ」

黙って、じぶんの分のワッパーに視線を落とすわたし。

「――食べたら?」

あすかさんが促す。

「…そうするわ」

ワッパーを口に持っていくわたし。

 

× × ×

 

食べるのに少し苦労した。

 

…フレッシュネスとは、異なる味わい。

フレッシュネスの繊細さとは違って、豪快。

ワッパーには、「豪快」の二文字が良く似合いそうだ。

 

……じゃなくってっ。

食レポみたいなことしてる場合じゃ、なくってっ。

 

「――久々にあすかさんに会えたんだし、近況報告をするわ」

「おー」

Lサイズドリンク片手のあすかさんが、期待に満ちた表情をする。

「…言うなれば、浪人生レポートね」

「そこは、予備校生レポート、でいいじゃんよ」

苦笑して言うあすかさん。

「…そうかもね。

 予備校のこと、なんだけど。

 真面目に通っては、いる」

「徳山さんが予備校サボりまくるなんて考えられないよ」

「そう思う?」

「そういうキャラだし」

「きゃ、キャラって」

「ごめんごめん、口が滑った」

「……いいけど。

 模擬試験も、真面目に受けてはいるわ。

 でも」

「でも??」

「横ばい、っていうほどじゃないんだけど……少しずつしか、偏差値、上がってなくて」

「不安なんだね」

「うん」

「ズバリだった」

「……」

 

椅子の背もたれに背中をくっつける。

そして「ふぅ……」と嘆きの溜め息をついて、下を見る。

 

そんなわたしに、

「それは、アレだな」

と言う、あすかさん。

 

「アレ……って??」

「アレだよ、アレ」

「ぐ、具体的に言って……」

「フフッ」

「あ……あすかさん!!」

 

「徳山さん。」

「……」

「わたしんち、来なよ」

 

!?

あすかさんの……あの、豪邸に!?

 

「来なよー。そろそろ、来たくなってくる頃じゃない?」

「あなたの邸(いえ)に行って……どうするっていうのよ」

 

ニコニコと笑うばかりのあすかさん。

 

「もしや、羽田愛さんを、わたしの教師役にしたいとか!? ……無茶でしょ。だって愛さん、いま、調子を崩しちゃってるって」

「うん。そうだね。

 そうなんだけど」

 

ニコニコを絶やさぬまま――彼女は、

お風呂

 

「え、ええぇ!??!」

 

「わたしんちの、大きなお風呂に入ってさ、洗い流すんだよ――予備校生特有の、不安を」

 

「な…なにを言うの、あすかさん」

 

「初心(ウブ)だなー、案外」

 

「な、なによっ、それっ」

 

「JKじゃないんだからぁ。

 いま、徳山さんは予備校生だから――略してYKか」

 

「…メチャクチャなこと言うわね、あなた」