卒業生の濱野先輩に取材することになった。
OB訪問的な感じで母校にやって来た濱野先輩だったのだが、現在(いま)は、あたしたちスポーツ新聞部の活動教室に来てくれている。
これから、あたしがインタビュアーになる。
なぜか、会津くんも、インタビューに同席。
なんで会津くん居残りしてるんだろ。
あたしのこと、見張ってなきゃいけない…とでも、思ってるんだろーか??
心外な……。
× × ×
とにもかくにも、インタビューの録音は開始されたのだった。
まずは、
「――生徒会室には、顔を出されてきたんですよね?」
と訊く。
濱野先輩は、前代の生徒会副会長。
「出してきたよ、顔。飯塚くん、貫禄があって、いかにも生徒会長キャラだなあ……って思った」
ハンサムな顔で、濱野先輩は、生徒会室に顔を出してきたことを語る。
「……丸山副会長は、どうでしたか?? 丸山先輩、昨年度は書記で、濱野先輩といっしょに生徒会を運営されてましたよね」
そう訊くと、濱野先輩は軽く笑って、
「丸山は、相変わらずだな。書記もよく似合うけど、副会長もよく似合う。…もしかしたら、副会長こそ、あいつにはいちばんよく似合ってるのかもしれない」
と言った。
ふーーん。
「――今年の文化祭が2日制になったの、ご存知ですよね?」
「知ってるよ」
「2日制だと、生徒会をはじめとする運営スタッフの負担は大きいと思うんですけど、それについては」
「んー。
OBやOGの手も、借りたくなってくる…のかもな」
「なるほど」
なるほど。
濱野先輩、もしかしたら、開催時は手伝ってあげたい…とか、思ってくれているのかもしれない。
「…フリーダンスが、2日目の最後なんだろ?? みんな、ヘロヘロになってるよな」
そこかー。
「参加者、まともに踊ることとか、できるんだろうか」
そこかーっ。
……。
あたしは、敢えて、
「できますよ、たぶん。ヘロヘロになってたって、なんだかんだで高校生なんですから」
と、ことばを返す。
そう。
あたしたちは、高校生で、若いんだ。
……それから、あたしは。
『あたし勝手(がって)』に。
笑い顔を、濱野先輩に対して、作り上げて。
「濱野先輩。
先輩には……いい思い出があるでしょ。フリーダンスで」
濱野先輩のハンサムフェイスが青くなり始めた……気がする。
畳み掛けるように、あたしは、
「徳山すなみさんと……フリーダンス、してましたよね!?」
と……『彼女』の名前を……出していく。
濱野先輩、ヤバいぐらい、うろたえてきてる。
「こ、こらっ! 日高、いきなりなに言い出してるんだ」
型通り――脇に居た会津くんが、あたしを注意する。
まったく構うことなく、
「だってあたし、どうしても訊いてみたかったし、こういう機会じゃないと、訊けないまま終わっちゃうし」
と、突っぱねる。
「日高……!」
「なぁに?? 会津くん」
「イエローカードがどう……とか、君は言っていたよな?! カンペキにブーメランみたいな言動じゃないか」
「ブーメランってなに。意味わかんないよ」
「ボクに対し『イエローカード出しちゃうよ!?』とか言ってた人間が、じぶんからイエローカードを貰いに行くような言動をするなんて……!」
――ハァ。
「会津くん。ますます意味わかんないよ」
「し…しらばっくれんな。濱野先輩も迷惑だぞ。それぐらい、わからんか!? あんまり暴走するようなら、ボク、実力行使に――」
「会津くんうるさい」