月見バーガーをサークル部屋で食っていた。
これも、風流か……と思いつつ食い終えて、セットドリンクのコーラを飲んでいたら、飲み切る寸前で、ノック音。
おそらく、このノック音は……。
× × ×
「やっぱ、梢さんだったんですね。もうノック音で判(わか)るようになりました」
東本梢(ひがしもと こずえ)さん。
おれより年上で下級生なんだが、詳しい背景は省略で。
「――きみ、ノック音を聴き分けるのが特技なの?」
訊く梢さん。
「特技ってほどでも」
答えるおれ。
「ふーーん」
覗き込むようにおれの顔を見る梢さん。
どういう視線ですか、その視線は……。
「アツマ君ひとりだけなの??」
「あいにく」
「土曜なのに寂しいねえ」
「ま、こんなケースだってありますよ」
「でも、ひとりだけは辛いでしょ」
「辛くは……ないです」
「強がんないでよ」
「!?」
「――1時間、このお部屋に滞在してもいい??」
1時間ですかっ。
「だーってさぁ。ぜーったい、手持ち無沙汰になるでしょ?? アツマ君」
「この部屋にはいろいろな物がありますから、手持ち無沙汰になることは……」
「問答無用」
「そんな!?」
× × ×
梢さんの身長は166.5センチらしい(じぶんから申告してきた)。
引き締まったスタイルの梢さんが部屋の椅子に腰掛け、脚を組む。
「――アツマ君さぁ」
「は、はい」
「私が脚を組んだ瞬間に、ド緊張になり始めてない??」
「ばっばかなこと言わないでくださいよ」
「案外――年上好きか」
好き勝手なことを……。
「でも、恋人は、年下なんだよね☆」
……チッ。
× × ×
「きみテンパってるから、私たちのサークルのこと話すよ」
「…」
「会員がねえ、京都丹後鉄道に乗ってきたんだって」
また西日本の鉄道の話題かよ……。
「『はしだて』っていう特急に乗ったんだってさ♫」
……頭を抱えているおれだったが、
梢さんはいま、きっと……満面スマイル。