・おとうさん
・お母さん
・わたし
・利比古
・明日美子さん
・アツマくん
この6人で…家族会議。
× × ×
議題はもちろん、わたしの今後のことについて。
――なんだけど、
「――愛。しばらく休んでみたらどうかしら」
と…お母さんに、提案されてしまう。
「あなたはここまで全速力で突っ走ってきたわ。だけど、息をつくヒマもなかった。
走るスピードを上げすぎて……ガソリンが切れてしまったみたいな。そんな状態だと思うのよ。
つまり、頑張りすぎた、っていうこと。頑張りすぎて、消耗しすぎた。
消耗しすぎた結果が……いまみたいに、重く沈んでしまっている状態」
「そんなに……深刻に見えるっていうの」
わたしは強がるけど、
「どう見たって」
すかさず、言われてしまう。
また、強がって、
「で、でも……後期が始まったら、大学に戻っていかなきゃ」
と言うが、
「その状態で大学に通えると思う?」
間髪を入れず、言われてしまう。
「わたしにはとてもそんな風には見えない」
バッサリと言われてしまう。
容赦のないお母さん。
「…あなたも、そう思うでしょう?」
おとうさんに対して、お母さんは問いかけた。
おとうさんは……黙って、うなずく。
「ほら。お父さんにも、やっぱりそう見えるのよ」
とお母さん。
「ふだんから、愛を観ていたら――もっと実感してるはずよね」
お母さんは明日美子さんを見た。
利比古も見た。
アツマくんも見た。
利比古もアツマくんも……真顔で沈黙。
「愛ちゃん」
口を開いたのは明日美子さんだった。
「わたし……心(シン)ちゃんと、同意見」
明日美子さんまで……お母さんに同調するなんて。
胸の奥がチクリ、と痛む。
でも……。
同調、なんだけど。
明日美子さんが、お母さんと同じ考えを持つのは……仕方のないことなのかもしれない。
お母さんと同じくらい、わたしのことを分かってくれている……明日美子さんなんだもの。
苦し紛れというか、なんというかで、
「このまま……休み続けたら、大学の単位、とれない」
と言うわたし。
…お母さんは少しも揺らぐことなく、
「1回ダブったぐらいで、どうってことないわよ」
と。
「お、お母さんも、おとうさんも、ダブったことなんかないでしょ?? どうして、どうってことないなんて……分かるの!?」
「あのねえ、愛」
微笑をたたえた顔で、お母さんは、
「世の中ってのはね、1回しくじったぐらいで全部終わりになるようには出来てないの」
とか言い出してくる。
「せ、説得力、ないっ」
「そう思うのは、あなたが20年しか生きていないから」
「な、なにそれお母さんっ。そんなの、根拠にならないじゃない」
「愛」
「……なによ」
「少し落ち着きなさい。オーバーヒート寸前になってるから」
「……」
× × ×
「お母さん、あることないこと言ってる気がする……。
家族会議なのに、完全にお母さんの独壇場だった。おとうさんが可哀想だった。おとうさんにもっと発言権与えたっていいじゃないのよ……」
家族会議の「反省会」。
というより、お母さんへの不満大会…。
アツマくんと利比古を前にして、わたしは不機嫌。
「おまえは――反抗期モードになっちまってるけどさ」
アツマくんは、わたしと対照的な冷静さで、
「おまえのお母さん――妥当なことしか、言ってないぜ?」
と、お母さんを立ててくる。
「どうして妥当だって思うの…? アツマくんは、お母さん派なの??」
「バカだなー」
「ちょ、ちょっと」
「派閥もなんにもねーだろ」
「……」
「お姉ちゃん」
今度は、利比古。
「ひと休み、しようよ」
「ど、どういう意味よ、ひと休みって」
「冷静な判断、できないでしょ? いまのお姉ちゃん」
「ん……」
「ねっ」
「利比古……」
「ひと休みしたら、お母さんへのイライラやムカムカやモヤモヤも、少しは引いていく」
「……どういう確信よ」
「ダメだよ、お姉ちゃん」
「な……なにがダメなの」
「弟の言う通りにしてくれなきゃ」
「なっ……」
「弟に説教させる気なのかな?? お姉ちゃんは」
しょーがないなあ、という表情で言う利比古に……わたしは、困ってしまう。