【愛の◯◯】なぜかハイテンションなのは、短縮版だから?

 

ダイニングテーブルでノートPCを流(ながる)さんが操作している。

文章を打ち込んでいるみたいだ。

どんな文章か?

わたしにはだいたい見当がつく。

 

冷蔵庫から無糖ボトルコーヒーを出し、わたし専用マグカップにドバッと注ぐ。

そして、流さんの向かいの席につく。

 

「ご苦労さまです、流さん」

「あ、おはよう、愛ちゃん」

「ずいぶん集中してましたね」

「アハ…。まあね」

「わたしなんかアウトオブ眼中みたいだった」

「え!? …そ、そんなことはない」

 

わざとニコニコ微笑んでみる。

わたしのイジワルが土曜朝から炸裂である。

 

「ながるさーん」

「な…なんだい」

「…小説、書いてたんでしょ」

「よ、よくわかったね!?」

「わかりますよー」

 

コーヒーをゴクリ、と飲む。

マグカップを静かに置く。

 

それから、わたしは、

「早く読ませてほしいなー、流さんの作品」

と、イジワルを言うのである。

「か、完成には……もう少しかかっちゃうかも……だな」

テンパり気味の流さん。

敢えて、

「わたしが、ここで締め切りを設定したりしたら、どうします??」

とイジワルを重ねる。

うろたえる流さん。

さらにさらに、わたしは、

「わたし、流さんの『編集者役』になっちゃおうかな~」

とイジワル攻撃。

 

「愛ちゃんが……ぼくの……編集者??」

 

無言でニコニコなわたし。

 

「と……戸惑っちゃうな。そんなこと言われたら」

 

あはっ。

 

「――ですよねっ。流さんじゃなくっても、戸惑っちゃいますよね。

 ヘンなこと言って、ごめんなさい♫」

 

× × ×

 

マグカップの中身が空になった。

 

ノートPCを閉じた流さんが、

「きみの調子が良さそうで、なによりだよ」

と言ってくれる。

「若干ハイテンション過ぎるかもだけど……その調子を持続させてほしいな」

「ハイ! がんばります」

「調子の波っていう厄介なものもあるけど。……沈んじゃってるときは、ぼくも、話とか聴いてあげるからさ」

「どうしてそんなに優しいんですか!? 感動的に優しいんですね、流さんは」

わたしの勢いに驚きながらも、

「……そりゃ、優しくするさ。きみが大変な時期だから、なおさら」

と言ってくれる流さん。

 

テンション高めのわたしは、勢い余って、

「――わたしの部屋に、また来ます?」

と言ってしまう。

 

流さんは一気に戸惑って、

「な、なぜに、そんなこと言うかな」

と訊く。

 

ダンマリのわたし。

 

「そんなこと言う理由を……教えてくれないと……困る……かも」

 

わたしは冷酷にも告げる――。

 

短縮版なので、理由を言うのはカットです