「ヒナちゃん、きょうは短縮版」
「短縮版なんだー!! ソラちゃん」
「は、ハイテンションだね」
「具体的には、何文字ぐらいに??」
「…1000文字」
× × ×
「悠長にしてる暇ないし、自己紹介しちゃうね。…あたしは、日高ヒナ。とある高等学校の2年生で、スポーツ新聞部」
「…水谷ソラっていいます。同じく、とある高等学校の2年生で、スポーツ新聞部所属」
「それから、状況説明すると、きょうは土曜日なんだけど、部の活動のために登校してきた…というわけ」
「いわば『休日出勤』だよね」
「まさに」
「…でも、現在、部の活動教室には、わたしとヒナちゃんのふたりしか居なくって」
「後輩の本宮なつきちゃんが、もうすぐ来てくれるはずだけどね」
「なつきちゃんの到着まで辛抱だね」
「――ソラちゃん。
きょうの部活は、女子3人だけなんだね」
「そうなるんだよねぇ」
「なんでかっていうと。
会津くんは、メガネ屋さんに行くからって、欠席。
加賀先輩は、模擬試験を受けるからって、欠席…」
「…加賀先輩が欠席する理由は、妥当なんだけど」
「…会津くんのほうは、ぜんぜん妥当じゃないよね。筋、通ってない」
「メガネ屋さんに行くのは、日曜でもいいでしょうに…っていう感じ」
「メガネを大事にする気持ちはわかるんだけどさー」
「部活動のほうを優先させてほしかった」
「ほんとーなんにもわかってないよねー、彼。あたしたちの憤りなんて、感知もしてないんだ、たぶん」
「ヒナちゃん、ヒナちゃん」
「なーに?」
「会津くんの悪口大会で行こうよ、きょうは」
「あ!! それいい!!」
「なつきちゃんも巻き込んだら、もっと楽しくなるよね!?」
「ゼッタイ!!! なつきちゃんにも、彼に対する不満が存在してるに違いないんだし」
「だよね~~」
× × ×
「それにしても、あたし驚いちゃったよ。ソラちゃんもじゃない??」
「えっ、いったいなにに対して」
「加賀先輩の、マジメさに。」
「あ~~。あの加賀先輩が、模試をマジメに受けに行ってるんだもんねぇ」
「――するんだね、加賀先輩も。大学受験。」
「その気になってるんだと思うよ」
「心境の変化というか、なんというか……。加賀先輩を『その気』にさせたのは、だれなんだろう。……あすか先輩の影響かな?? やっぱし」
「それはやっぱり大きいよヒナちゃん。加賀先輩にとって、彼女の存在、彼女の影響力は――」
「同意見?」
「うん。なんというか、あすか先輩って、人間の器が大きいんだよね…」
「…器、大きいし、胸も大きいよね」
「コラコラ、ヒナちゃんってば」