【愛の◯◯】ふたりきりの土曜日だが残念ながら短縮版

 

「ハルくん、きょうは短縮版よ」

「ふーん」

「1000字未満で」

「ふーん」

「……なにかしら、その相づちは」

 

× × ×

 

「愛ちゃんのお邸(やしき)に、『お見舞い』に行ったんだけれど」

「うん」

「あなたからのメッセージ、ちゃんと伝えたから」

「それは良かった。…どうだった? 愛さんの様子は」

「…低空飛行ね」

「そっか……」

「近いうちに、もう一度行ってみたほうがいいのかも」

「じゃあ、おれもいっしょに――」

それはどうかしらねえ?

「」

 

「――ところで」

「な、なにアカ子」

「ハルくんは――」

「おれは?」

「いつから、愛ちゃんのこと、下の名前で呼ぶようになったの?」

「んっ――」

「以前は、『愛さん』じゃなくて『羽田さん』呼びじゃなかった?」

「…そうだっけ」

「じぶんでも憶えてないのね。

 …まあいいわ。『愛さん』呼びのほうが良いと思う」

「こうも長くブログが続いていると…」

「??」

「書いてるひとも、各々の『名前の呼びかた』とか、把握しきれなくなってきてるんじゃないのかな」

「ハルくん、それは管理人さんを軽く見過ぎよ」

「エーッ」

伊達に1000回以上このシリーズが続いてるわけじゃないのよ!?

「……そんなに迫ってこなくても」

 

× × ×

 

「状況説明をすると、いまは土曜午前、あなたとわたしがいるのは、わたしの邸(いえ)のわたしの部屋」

「…だね」

「幸いなことに、蜜柑が外出中」

「幸いなことって、オイオイ」

「そして…両親も、きょうは土曜ながら忙しく」

「――ま、広いお邸(うち)にふたりきり、ってことだね」

「……わたしとあなたの土曜日は、まだ始まったばっかり」

「たのしい土曜日になるといいね」

「たのしくさせるのは……あなたなのよ、ハルくん」

「と言われてもなぁ」

「せっかくわたしとあなたしか居ない空間なのよ!?」

「そうだけど」

「そうだけど、じゃないわよっ。

 たのしくなるようなことを考えなさいよっ!」

「……たのしいことにも、いろいろな方向性があると思うんだけど」

「……」

「まだ、土曜の午前なんだよな」

「そ、それがどーかしたの??」

「大学生カップルっぽいことするには、まだ早すぎる……というか」

「あ…あなた、いったいなにを考えてるのよ。

 もしかして、もしかして、不埒なことを…」

「~♫」

鼻歌なんか歌わないで!!!