【愛の◯◯】余計な話が降り積もってしまうバイト先の模型店

 

アカ子です。

皆さん、暑さ対策は、しっかりとされていますか?

最近、かなり暑くなってきましたよね……。

 

× × ×

 

太陽がギラギラと輝くなか、アルバイトに赴いた。

バイト先は、某模型店

ここでのバイトも、2年目に突入。

 

例によって、タ◯ヤ模型さんのロゴマークをあしらったシャツを着てきている。

もちろん、わたしのお手製シャツ。

このシャツに加えて――ミニ四駆のイラストがプリントされた帽子をかぶっていると、かなりの『雰囲気』が出てくる。

爆走兄弟レッツ&ゴー!!』の世界に来ている感じ。

21世紀生まれのわたしが、どうしてこのアニメを知っているのかというと……父が、『あれは神アニメだった!!』と言いまくっていたからだ。

 

× × ×

 

『レッツ&ゴー!!』を観ていた世代が親になって、ミニ四駆ブームが再燃しているという。

もっとも、1990年代後半には、わたしの父はバリバリの社会人だったわけだけれど。

平日夕方のテレ東アニメを観る時間を、どうやって作っていたの……。

 

 

ミニ四駆大会が開催されているサーキットをいったん離れ、売り場のほうで一休み。

アルバイト仲間のコシタさんが、

「アカ子さんってさ、やけに昔のアニメに詳しいよね」

と、若干不都合な事実に言及してくる。

「ぜんぶ、父の影響です……」

「あー。言ってたねアカ子さん。お父さんがやたら、アニメ語ってくるって」

「聞き流していたつもりなのに、自然と知識を得てしまったんです」

耳学問という形容がピッタリ。

耳学問で得た余計な知識が、プラモデルを売るときに役立ってしまったりしているから、恐ろしい…。

「この前なんかさ、『勇者シリーズ』に出てくる勇者ロボの名前、いっぱい知ってたじゃん?? おれ、驚いちゃってさ~」

コシタさんだけでなく、店主のイバセさんも驚いていた。

「…父が、熱く語っていたので」

「すごいお父さんだねえ。『勇者シリーズ』にまで詳しいなんて」

「…すごいの反対ですよ」

「イヤまじですごいから」

「……。

 父は……『エクスカイザー』から『ゴルドラン』までだと、うんざりするほど雄弁に語り倒すんですが」

「『ダグオン』は?」

『ダグオン』の話になると、なぜか口数が極端に少なくなるんです

「エーッ、どうして」

「知りません……。

 でも、失礼ですよね!? 失礼だと思いません!? 『勇者指令ダグオン』という作品を作った人たちに……!

にわかに殺伐モードになってしまったわたしのせいで、コシタさんはうろたえてしまい、

「が、『ガオガイガー』についてはどうなの、お父さん。『ガオガイガー』、『ダグオン』の後番組だったんだけど……」

あーっ。

ガオガイガー』の話に行く流れに、なっちゃったかー。

……わたしは殺伐モードを解除し、穏やかに、

「『ガオガイガー』に関しては、ノーコメントで」

「ノーコメント……って、そりゃまたどうして」

「日が暮れてしまいますから」

「……把握した。」

 

× × ×

 

「アカ子おねーちゃん、アニオタだったんか??」

レジの前に立ち、訊いてくる、罪のない男の子。

朗希くん、という、某球団のピッチャーと同じ名前の子。

『ロッキー』というニックネームがある。『朗希』からの連想だ。

「アニオタじゃないわよ」

やんわりと、否定。

しかしロッキーくんは、

「せっとくりょく、なくね!?」

と食い下がり。

「すげー話すじゃん、大昔のアニメのこと」

「ロッキーくん、あれはね、わたしがしゃべっているんじゃなくて、お父さんにわたしがしゃべらされているのよ

 

ロッキーくんは……眼をパチクリさせるばかり。

無理もないわよね……。

 

「ごめんなさいね。あなたぐらいの年頃の子には、難しかったわよね」

「――そういう、むずかしーこと、言えるのって、」

「えっ?」

「やっぱ――アカ子おねーちゃんが、かしこいから、なんだよな」

「……それは、どうかしら」

さすが、けーおーだいがくだ

 

「……」

 

「どしたん、おねーちゃん?? かたまっちゃってるみたいになって――」

 

「――わたしの大学よりかしこい大学なんて、いくらでもあるから」

 

「えーっ!? わせだととーだいぐらいじゃね!?

 

「……ロッキーくん。」

「なに」

「そのへんに、しておきましょうね?」

「なぜ」

「……大学生の、事情」