「はいっ、利比古くんっ、きょうは短縮版だよっ!」
「……ずいぶんとハイテンションな短縮版宣言ですね」
「できれば、1000文字以内におさめたいよね~」
「なんでそんなに元気なんですか? あすかさんは」
「大学合格が決まってるからかな」
「あー、なるほど」
「来年度は、利比古くんのほうが、受験生の立場になるね。ストレートで大学に受かってるといいね」
「まだ先のことですよ」
「これだから利比古くんは…」
「…そんな眼で見ないでもらえますか?」
「利比古くんの痛いところ突くよ、わたし」
「痛いところ??」
「……おねーさんにお説教したんでしょ、この前」
「エッどうしてそれを」
「バレるよそりゃ。
わたし、『言い過ぎてごめんなさい…お姉ちゃん』って、利比古くんがおねーさんに謝ってるところ、バッチリ目撃してるんだもん。
それから、きのうとか、利比古くん、おねーさんに対して『当たり』がいつも以上に柔らかかったし。おねーさんのほうも、いつも以上に、利比古くんに優しく接してる感じがした。――お説教でギクシャクしちゃったから、お互いに、よりを戻したかった…っていうことなんでしょ?」
「……」
「利比古くんって、急におねーさんに厳しくなったりするよねえ」
「……はい。
3日前の記事で、ぼくが突然怒り出してしまったので、このブログの読者のかたは、唐突な印象を受けられたかもしれません」
「こら、そういうメタなことはあんまり言うもんじゃないの」
「前触れもなく、あんなに厳しく姉を問い詰めてしまったから……『どうしたんだろう? 人が変わったみたいに』という違和感を抱かれるのも、当然で」
「…利比古くん」
「…ハイ」
「読者に向かって話してるんだか、わたしに向かって話してるんだか、わかんなくなっちゃってるんじゃん」
「ハイ…」
「短縮版だし地の文ないし、致し方ない面もあるにはあるけど。…とりあえず、わたしの顔を見て、話してよね」
「見てるつもりではいるんですが……」
「不十分。眼を見なさい、眼を」
「……。こうですか?」
「うむ、よろしいよろしい。あんまり目線を逸らしたら、あなたの履いてるスリッパ、踏んじゃうんだからね?」
「そ、それはイヤです。痛いのは……」
「だったらわたしの眼を見続けて」
「……わかりました」
「――フフッ」
「な、なにがおかしいんですか」
「おかしいなあ。
だって、こんなにハンサムな男の子と見つめ合ってるのに、わたしぜんぜんトキメキを感じないんだもの」
「……よかったですね。」
「フフフフッ」