【愛の◯◯】おれのテンションがこんなに乙女チックなわけがない!?

 

大学の後期が始まっている。

3年生の後期だ。いろんな意味で、大学生活のクライマックス……ってとこだろうか。

進路を決めなければならない。

まあ、就職しかないんですけどね。

講義が終わって、キャリアセンターにでも行ってみようかな……とも思ったが、学生会館行きを優先させた。

まだ慌てなくてもいい。サークルでまったりしよう。

そんなわけで、『MINT JAMS』のサークル部屋に向かったわけだ。

 

八木とか星崎とか、ギャーギャーやかましい女子が来ていないことを願って、『MINT JAMS』の扉を開けた。

中にいたのは、ギンさんと鳴海さんだった。

よっしゃ。うるせー奴らは来てない。先輩男子、ふたりだけ。

「こんにちは。ギンさん、鳴海さん」

「やあ、戸部くん」とギンさん。

「ウェルカム」と鳴海さん。

おれは椅子に腰かけて、

「きょうは、ここも、平和な空間ですね」

「平和な空間?」

ギンさんにおれは答える。

「八木や星崎が、空気をかき乱すこともなく。このまま奴らがやってこないのを願うばかりです」

苦笑してギンさんは、

「厳しいねえ。部屋に人がいっぱいいたほうが、盛り上がって楽しい気もするけど」

まあ、束の間の平和なのかもしれない。でも、せっかくだから、この3人でまったりしてみたい。さながら、男子会だ……。かしましい女子のいない間に。

 

ギンさんは資格試験のテキストを開いている。

「がんばってますね、ギンさん。おれも見習いたいです」

「ありがとう、戸部くん。悠長にしてる場合じゃないからねぇ」

「ギンさんの猛勉強を見てると、モチベーション上がるんです」

「そ、そうなの!?」

「ああ、おれも、がんばらなきゃ……って。がんばらないでどうするんだ、って。具体的になにをがんばるべきかは、まだ、見えてないんですけど」

ギンさんは、ボールペンを挟んでテキストを閉じ、穏やかに、

「見えるようになるよ。自然と」

こころ強いお言葉……さすがだ! 人生の先輩!!

 

「――また、この3人で、行きたいね、プール」

『打ち上げ』に言及するギンさん。

このサークルにおいて『打ち上げ』とは、学生会館を出たあとで温水プールで体力づくりをし、その後ラーメンを食べて帰る、というものである。

「いまから行っちゃいませんか!? サークル部屋に3人揃うことも、さいきんはなかなかないし」

提案するおれ。

「たしかに、こうやって打ち上げ3人組が勢揃いするのも、レアだよなあ」と言うギンさん。

「貴重な機会じゃないですか!」とプール行きを推しまくるおれ。

「あ、だけど、水着持ってきてなかった」とギンさん。

「水着は買いましょう」とあきらめないおれ。「買うんだったら、水着代はおれが出しますから」

「戸部くんもしょーがないなぁ」とギンさんは苦笑い。

おれは鳴海さんを見て、

「鳴海さんは、たぶん……きょうも水着、持ち歩いてる」

「よくわかったね。戸部くん、超能力でも使えるのかい?」

「いいえ、直感です、鳴海さん」

「素晴らしい直感だな~。……よし、おれは、プール後のラーメンをどこで食べるか、下調べをする」

そう言って鳴海さんは、どこからともなくラーメン店ガイドを取り出して、丹念にページをめくっていく。

「――そうだ。ひらめいた」

ひらめきのおれは、ギンさんに、

「ラーメン食べるとき、ルミナさんも呼びませんか!? ちょうど、お仕事も終わるころになると思うし」

「たしかに、仕事終わりのルミナを呼ぶには都合の良い時間帯になると思うけど――積極的だね、戸部くんは」

「ルミナさんとも久しく会ってませんし」

「……ルミナロス?」

「だって、ルミナさんも、『MINT JAMS』の大切な仲間だったじゃないですか!」

「……正式な会員じゃなかったけどね」

「それはどうだっていいんですよ」

――ギンさんを見つめて、

「ギンさんは、ルミナさんとは、毎日顔を合わせてるんでしょ」

少しうろたえ気味に、

「あっちは仕事、こっちは大学だから……すれ違う日もあるよ」

「でも、気持ちは、ぜんぜんすれ違ってない。職場と大学っていう離れた場所にいたって――通じ合ってる」

面食らった様子でギンさんは、

「戸部くん……少女漫画でも、読んだの?」

「いいえ」

「なんだか……乙女チックだよ」

「そう見えますか? だれの影響なんだろうなあ~」

「……」