【愛の◯◯】葉山先輩と中村創介の、凱旋門賞反省会

 

『――こんにちは、中村創介くん』

『こんにちは、葉山むつみさん』

『えっと――読者のみなさんには、わたしと創介くんがどうやって繋がったのかを、説明する責任があると思うんだけど』

『いいんじゃないでしょうか? そんなかったるいこと、しなくても。「競馬という共通の趣味で繋がった」でOKじゃないですか』

『それも、そうね――こうやって、オンラインで会話するようになった経緯については、おいおい』

『いちおう、手短な自己紹介はしておきましょうか?』

『まあ、ちょっとだけ』

『どっちから、します?』

『わたしから。――葉山むつみ、20代前半女子。高校を卒業してからのニート生活を脱却して、ようやくフリーターもどきになったところ。このブログでは、メインヒロインの羽田愛さんに「葉山先輩」と呼ばれてることで有名。競馬歴については……おいおい』

『……めっちゃ自己紹介してるじゃないですか』

『ごめんね』

『いいですよ。――ぼくは、中村創介。福岡の某大学の2年生。でも出身は東京で、高校時代は「スポーツ新聞部」という部活の部長をやってました。いまは、このブログでもおなじみの、戸部あすかさんが部長だな。腐れ縁……というか、なんというかの関係である笹島(ささしま)マオには、「ソースケ」、って呼ばれてます』

『わたし以上に自己を紹介してるじゃないの』

『す、すみません』

『いいのよ。ぜんぜん』

『あの、葉山さん……そろそろ、凱旋門賞の振り返りを』

『そうよね。前置き長すぎなのよね。いつもながら。スプリンターズステークスの振り返りもしたかったんだけど、このペースだとできないわね、たぶん』

『ぼくはスプリンターズステークス当てました、いちおう』

『あら! よかったわね。わたしはモズスーパーフレアちゃんと玉砕しちゃった』

『ピクシーナイトとシヴァージのワイドを、少しだけ……』

『いくら持ってたの?』

『いや、ほんとうに少額だったので、威張れませんよ』

『謙虚ね』

『あまり、「謙虚だ」とか、言われないんですけどね』

 

× × ×

 

『さて』

『さて』

『……トルカータータッソが、勝つなんてね』

『思いもしませんでしたよね。ぼく、最後の直線まで、トルカータータッソなんて馬が出走してることすら、把握してませんでしたよ』

『あらー、ドイツ国民に怒られちゃうわよ?』

『にしても、「現実の競馬はロマンより奇なり」、というか』

『うまいこと言うのねぇ。凱旋門賞って、ああいう荒れかたすることもあるのよね』

『…「60キロの斤量を背負い続けてきた」という事実を根拠にできたひとは、買えたのかなあ、トルカータータッソ』

『それはどうかしら?』

『難しいとこですね。……ところで、ぼくも葉山さんも、タルナワの単勝を買っていたという』

『お互い、無難すぎたのね』

『はい。無難な狙いかたすると、得てして負けちゃうんですよね』

『わたしね、出走取消しなかったら、ラブの単勝を買う予定でいたのよ』

『マジですか!? そりゃまた、なんで』

『わたしのかわいいかわいい後輩である、羽田愛さんの、下の名前が、「愛」でしょう? 「愛」→「ラブ」っていう、連想よ』

『…どんだけ羽田愛さんをかわいがってるのか、って感じですね』

『でも、ラブが取り消しちゃって。だったら、同じ牝馬のタルナワで妥協しちゃおう、って。タルナワ、死角もほとんどなかったし』

『セントマークスバシリカもいなかったですしね』

『そゆこと。……創介くんは? タルナワ本命の理由は?』

『んー、じつは直前まで、ハリケーンレーンかアダイヤーを買おうと思ってたんですよ。やっぱり3歳優勢だよなー、って。だけど、オッズ見たら、ハリケーンレーンもアダイヤーも微妙な売れかたしてて。ハリケーンレーン=アダイヤーの「親子丼」馬連も、しょっぱいオッズだったし。……で、「待てよ?」と思って』

『というのは?』

『スノーフォール、ハリケーンレーン、アダイヤーって、欧州の3歳が、とにかく下馬評高かったじゃないですか。だけども、考えてみれば、おれたちは「3歳が優勢」っていう固定観念に、縛られすぎてるんじゃないか? と。だったら、あえて、古馬からいってみるのもアリじゃないかな、って』

『かといって、日本の2頭――クロノジェネシスとディープボンドは、古馬でも買いづらい』

『宿命的に過剰人気ですし。だったら、タルナワしか、見えないや……って』

『そしたら、ドイツの4歳牡馬が、差し切っちゃったっていう』

『ですねー。絶妙に2着止まりでしたねー、タルナワも、スミヨンも』

 

『創介くん』

『はい』

『まだまだ、勝負師としては、甘いわね……わたしたち』

『そうですね……一歩先に踏み込んだ予想が、できなきゃいかんですね』

『精進しましょう』

『しましょう』

『週末は毎日王冠京都大賞典……秋競馬本番は、ここからよ』

京都大賞典マカヒキが出るんですよ』

『――好きなの? マカヒキ

『好きなんです』

マカヒキって――同期が続々と種牡馬になっていって、産駒も走り始めてるの、どんなふうに思ってるのかしら。ディーマジェスティとか、リオンディーズとか。サトノダイヤモンド産駒も、たしか来年デビューだし』

エアスピネルは、まだ現役ですよ』

『あ~』

ロードクエストみたいに、地方競馬で頑張ってる馬も。ロードクエストは盛岡競馬の芝重賞を連勝してて――』

『――詳しいわね。』