【愛の◯◯】「会いたい」と「会いたくない」の、せめぎ合い

 

さて、利比古の誕生日!

 

――なわけだけど、

その模様は、ひとまず、後日……。

 

なんでかっていうとね、

ブログのスケジュールの都合、といったものもあるし、

――このブログ、

おめでたいことがあって、

 

そのおめでたいことが一体なにかというと、

なんと、

なんと、

この【愛の◯◯】シリーズ、

通算900回を、本日で達成いたしました~!!!

 

わ~~。

めでたい~~。

じぶんの弟の誕生日に匹敵するぐらい、めでたいわ。

 

900回でしょ!?

このペースだと、年内に1000回到達するじゃない。

 

きょうは900回祝ってるけど、もう、1000回の大台へのカウントダウンは始まってるってことね。

 

楽しみだわ~~。

 

 

900回を迎えたし、

あらためて、わたしたちの愉快な日常を、これからも見届けていってくださいね。

 

というわけで、羽田愛からの、キリ番報告でした。

 

× × ×

 

「900回記念だけど、べつに管理人さんからの『天の声』は降ってこないんだな。

 管理人さん、謙虚……いや、そうでもないか。

 シリーズ、900回――いろいろ、変化してるよね、体裁とかさ。

 過去ログを閲覧してもらったらわかると思うんだけど」

 

――おっといけない。

 

じぶんの部屋で、なにひとりごとブツブツ言ってるんだろ、わたし。

 

慌てて、スマホを手に取り、

壁にもたれて、ベッドの上に座る。

 

通話したい相手がいるのだ。

 

× × ×

 

「こんにちは、りっちゃん。久しぶりね」

 

りっちゃん――麻井律ちゃん。

利比古の――先輩。

 

『久しぶり、愛さん』

「声が聴けて、わたしすこぶるうれしいわ~~」

『ほ……ほんとうに、すこぶるうれしそう』

「テンション高いの」

『どうして?』

「900回だから」

『きゅ、900回って、なにが!?』

 

アッいけない。

 

「――ごめん、いまのは忘れて」

謝ると、りっちゃんは、苦笑いをしているみたいに、

『のっけから、飛ばしすぎだよ――愛さん』

と言う。

「ごめんね。…近況報告、しよっか。どっちから、する?」

『じゃ、アタシから』

「――帰省してるのよね」

『うん。東京いる。まあ、そろそろ、大学(あっち)のほうに戻るんだけど』

「大学では、どう?」

『無難に勉強して、生活してるよ』

「りっちゃんの大学――なにもかもキャンパスとその周辺で完結してるから、そこが閉鎖的で、病んじゃう学生が少なくないって聞いたけど」

『心配してくれて、ありがとう。でも、アタシは大丈夫。そこまで、ヤワじゃないから』

「――よくやってるんだね」

『やってるよ。ひとりでも』

 

『去年の夏――家出して、そっちのお邸(やしき)にお世話になったことあったけど』

「そうだったねぇ」

『家出の原因は――アタシの家が、家庭崩壊寸前だったからで』

「……」

『でもね、

 思い切って、家出してから――そのあとで、アタシん家(ち)の雰囲気、少しづつ、矢印上向きになっていって』

「ほんとぉ!?」

『ほんと、だよ。

 お兄さんも……いまでは、引きこもりじゃ、なくなった』

「それはスゴい」

『専門学校に、通い始めて。

 ……会話が増えた気がする。アタシたち、家族』

「お家(うち)の雰囲気が良くなったんだね」

『みんなの、おかげ。愛さんも、含めて』

「ありがとう。そう言ってくれて」

 

『――愛さんの近況も、聴きたいな』

「順風満帆だよ。勉強はもちろん、サークル活動も」

『へーっ。サークルかぁ』

「部室で漫画読んで、漫画について語り合ったりして、そのあとで、ソフトボールで汗を流すの」

『……どんなサークルなの』

「アクロバティックでいいでしょ」

『アクロバティック……』

 

「――りっちゃんさあ、」

『えっ、なに』

「わたしの近況ばっかり――知りたがってるわけじゃないでしょ?」

『え、それって…』

「わたし以外にも、どうなってるのか気になる人間がいるでしょう」

『…愛さん??』

「うふふっ」

『な、なんでそこで、わざとらしく笑うの』

「お邸(やしき)に住んでる、人間でさ……」

 

『ん……』

 

「……いま、りっちゃん、ぜったい、だれかさんの顔を思い浮かべてる」

 

『……』

 

「わたしの弟で、あなたの、後輩。」

 

『…………』

 

「――怒んないんだ。

 怒るのかもしれないなー、と思いながら、あえて、利比古を持ち出してみたんだけど」

 

『……自然の成り行きでしょ、アンタが持ち出すのは。

 アンタの弟で、アタシの後輩なんだし』

 

「――それだけ?」

 

 

声を出してくれない――りっちゃん。

 

 

「――利比古、実は、きょうが誕生日だったんだよ」

 

 

…伝えたあとで、

1分間に迫るくらいの沈黙があって、

それから、りっちゃんはようやく、

 

 

『…それなら、教えてほしかったよっ。きょうになる前に』

 

「今度こそ…怒ったか」

 

『怒ってなんかない。でも、ちょっと、ショックが来た』

 

「それは――どんな種類の、ショック?」

 

『……。

 しぶといね、アンタも』

 

「しぶとい――??」

 

『食いついて、食い下がってきてる』

 

「――じぶんの弟に、まつわることだから」

 

『……、

 いきなり、話をぶった切るみたいだけど』

 

「?」

 

『お願いがあって』

 

「お願い、?」

 

『アタシが、大学(あっち)に戻るまでに――愛さんに、会いたい。』

 

「それは、お邸に来たい、ってことかな」

 

『ううん、違う。

 お邸までは、行かない』

 

「どうして?」

 

『……』

 

「……」

 

『……』

 

「……わかった。」

 

『……どんな、ことが?』

 

「りっちゃんも、繊細で、デリケートな女の子なんだ、ってこと」

 

『――ゴメン。

 まさに、そんなとこ。

 繊細で、デリケートなのが、アンタたちのお邸(やしき)に足を運ぶのを――ためらわせてる』

 

「深くは、追及しないよ」

 

『やさしいね』

 

「わたし、『愛』って名前だから」

 

『…そっか』

 

りっちゃんの声が…いくぶん、柔らかくなった。

 

 

× × ×

 

お邸に向かうのを、ためらわせる理由。

 

彼女の、繊細さデリケートさの……根拠。

 

あえて、拒んでいる、対象……。

 

 

わかりきってるから。

もうほとんど、把握してるから――、

 

利比古とのことは、そっとしてあげて、

わたしは、りっちゃんと1対1で会う約束を、取り付けた。