【愛の◯◯】板東なぎさはからかい上手のパーソナリティであるか否か

 

「はい! 皆さまこにゃにゃちわ~。きょうも、ランチタイムメガミックス(仮)のお時間がやって参ったのだ。

 パーソナリティは、もちろん、板東なぎさであるよ。

 …プレミアムフライデーだか知らないけど、きょうは金曜日、ということで、ちょっぴし、『豪華版』であります。

 どこが豪華版かというと――なんと! きょうは、スタジオがわたしひとりだけじゃないんです。

 

 眼の前には、2年の、羽田利比古くんが!!

 

 そう、そうなのよ、きょうの放送は、羽田くんがお手伝いしてくれるのー。

 具体的には――、

 なにをやらせよっか??

 決めてなかったー。

 …とりあえず、わたしの眼の前に座っててよ。

 あとで、適当に羽田くんに振るから。

 

 え?

 

『ほんとうに適当ですね』って言った?? 羽田くん。

 

 ……KHK会長のわたしに、そんなクチきいて、いいのかなあ~っ。

 

 あ。

 ひるまないで。

 そんなにひるまないでよっ、もう。

 お仕置きとか、罰ゲームとか、そんなことするつもりなかったから。

 

 落ち着いて、落ち着いて。

 

 ――、

 えっと、本編に入るよ。

 軽くフリートーク

 

 …あのね、わたしさ、最近、気になってる漫画があって。

 ここに今週号の『週刊少年マガジン』持ってきたんだけど、

 

『それでも歩(あゆむ)は寄せてくる』って漫画があるの。

 

 知らない?

 ――これ、羽田くんだけでなく、リスナーのみんなに訊いてる。

 

 知ってますよ―、っていうひとは、あとで教室に凸(とつ)るなりして、わたしに声をかけてちょうだいよ。

 

 あのねっ、

『それでも歩(あゆむ)は寄せてくる』ってのは、タイトルがかもし出してる通り、高校の将棋部が舞台のラブコメディ漫画で、

 主人公の田中歩(たなか あゆむ)くんが好きなお相手が、将棋部部長の八乙女(やおとめ)うるしセンパイ……なわけなんだけど、

 実は、八乙女センパイのほうでも、歩くんに対して……という、まぁまさにラブコメディ的な構図なわけ。

 

 つまり、センパイとコーハイの恋よ。

 先輩と後輩の、恋の駆け引き――。

 

 ドキドキしない?

 ドキドキするよね?

 

 ――羽田くんも、同意してくれるでしょ?

 

 ……んもうっ。

 とつぜんわたしが振ったからって、のけぞるようにビビらないでよっ。

 

 答えて。答えてよ。

 先輩と後輩の恋! コーフンする!? しない!?

 

 なんで、こんなこと、羽田くんに訊くかって言うとさあ、

 

 ――当事者、なわけじゃん。羽田くんは。

 

 えっ、なんの当事者か、って??

 決まってるでしょう。

 ちょうど、『それでも歩は寄せてくる』における、関係性みたいな……。

 つまりは、先輩と後輩の、禁断の、恋の……。

 

 ってちょっと!!

 羽田くんマガジンを強奪しないでよっ!!

 没収するつもり!?

 

 え、なに??

『とっととおたよりを読むか曲を流してください』???

 

 なんでそこで日和るのっ、羽田くぅん。

 たしかに、

 あなたの『先輩』は、卒業しちゃったけどねえ!!

 

 …そっか。

 あなたのプライベート、あんまり開示してほしくないのね。

 

 でもいいじゃんよ。

 どうせ、桐原高校ローカルの放送なんだから♫

 

『そういう問題じゃない』ってえ~??

 

 ――ああっ!

 羽田くん、マガジンをぶん投げた!!

 よくない、

 雑誌を粗末に扱ってる、よくないよ!!

 

 

 しょうがないなーっ。

 しょーもないマネしないでよっ、羽田く~ん。

 

 羽田くんもご機嫌斜めになっちゃったし…とっとと、おたよりコーナーに行こうと思います。

 

 ――スネちゃってぇ。

 

 ――ラジオネーム、『ケンタッキーは骨まで美味しい』さん。

 

『俳優の吉沢亮さんが好きすぎてつらいです。』

 

 ……あ、そう。

『東京卍リベンジャーズ』の実写映画にも、出るんだよね。

 さっきマガジンの巻頭グラビア見て、知ったんだけど。

 

 どちらかというとわたし――俳優より声優のほうが詳しいんだけど、

 吉沢亮は……名前は、知ってる。

 俳優さんにはどーも疎(うと)くってさー。

 よくないね。

 

 ねえねえ羽田くん。

 羽田くんも、20代になったら、イケメン俳優と遜色ないような、そんなイケメン男になりそうだよね。

 

 …こらこらっ、顔を伏せない。

 わたしにそのモテ顔(がお)をもっと見せてっ。

 あなたは今後も、モテにモテ続ける宿命なんだからねっ。

 楽しみだよホント。

 

 ……エエッ!?

 

 とーとつに、とーとつに、なに言うの羽田くんッ!!

 

板東さんもモテるんじゃないですか』だってぇ!?!?

 

 それで、言い返したつもり!??!

 

 わたしと張り合おうっての!?

 いい度胸ね。

 …まさか、

『ぼくは姉と日々渡り合ってるから、板東さんと張り合うのは怖くないです』

 とか言わないでよね!?

 

 わっわたしはっ、たしかに…あなたのお姉さんを尊敬してますけども。

 …あなたのお姉さんを引き合いに出されると、困るよ。

 

 ……。

 困ったな。

 若干、羽田くんを制御しきれてない。

 羽田くんを、手懐(てなず)ける時間が、ほしいので――、

 ここで1曲。

 

 曲は、flumpoolの――」