夕方、アツマくんが、バイトから帰ってきた。
が、くたびれたような様子で、速攻で部屋へと上がって行った。
アツマくんでも、くたびれること、あるのかな?
――大学の休みじゅう、ずっとバイトで働き詰めだから、そろそろ「勤続疲労」が来てるのかもしれないわね。
× × ×
借りていたマンガを返しに、アツマくんの部屋に入った。
「はぁ」
のっけから、ため息をつくアツマくん。
「マンガ、ここに置いとくね?」
「……」
「ちょっと、なんとか言いなさいよ」
「……疲れてるんだ。」
そっかそっかー。
とりあえず、ベッドでアツマくんの左隣に座ってあげる。
「そりゃ、アツマくんだって、人間だもんね」
「おれをどんな生き物だと思ってたんだ……」
さりげなく左手を取って、
「ハンドマッサージ、してあげようか?」
「出来んの?」
「自己流だけど」
× × ×
そしてわたしはアツマくんの手をマッサージして、ホグホグとほぐしてあげた。
その手を軽く握って、
「はい、少しは楽になったでしょ?」
しかし、彼からの反応に乏しい。
「――どうしたのよっ」
「いや、なんか――、
眼が、トローンとなってきてさ」
「……眠いの!?」
「ねむい……」
おもむろに寝っ転がるアツマくん。
「ちょちょっと、このタイミングで眠らないでよっ!!」
アツマくんに覆いかぶさって、からだを揺する。
しかし、大きな寝息をたてて、爆睡モード。
「…そんなに疲れてたの?
言ってくれればよかったのに…」
わたしのほうからも、「疲れてない?」って声掛けをするべきだったのかもしれない。
アツマくんのからだに乗りかかったまま、反省するわたし。
……。
こ、これから、
どうすればいいのかな、
寝入ってるアツマくんを、ほっとくわけにもいかない。
ふたりきり。
――とりあえず、
彼の上半身に、寄り添って、
寝ている彼の胸のあたりに、ちょこんと頭を乗っけてみる。
どくん、どくん、どくん。
彼の胸の鼓動。
――わたしの心拍数も上昇しているのはたしかで、お互いの鼓動が、やがてないまぜ状態になってくる。
アツマくんのからだ――、
やっぱり、あたたかい。
真夏も過ぎて、ちょうどいい気温で、アツマくんのからだのあたたかさが、気持ちよくって、贅沢なくらい気持ちよくって。
もっとひっついてたい。
彼のからだに、全部、身を委ねたい。
彼とからだを重ねると、いちばん安心できる。
添い寝するみたいに、アツマくんと同じように横向きに寝て、頭の後ろを彼の胸に押し付けてみる。
背中から抱かれてるみたいな感覚。
完全に彼は爆睡状態で、びくともしない。
からだが、心地よいぬくもりに包まれていくと、
しだいに、眠気が芽生えてくる。
『お~い?』
アツマくんの声がして、
飛び上がるようにわたしは起き上がる。
「どうした?
そんなに顔真っ赤にして」
鈍感……。
あ…アツマくんと、いっしょに寝ちゃった、
はじめて、じゃ、ないと、思うけれど、
何度目でも――恥ずかしい。