【愛の◯◯】お昼休みにゲストに来てくれたらイチゴ大福差し上げます

 

「はい! 旧校舎のみなさ~~ん?? 今日も『ランチタイムメガミックス(仮)』のお時間がやってまいりました~。今週もあと午後の授業を残すのみ、頑張っていきましょうね。

 麻井会長とは別人の声が流れてきて驚かれているかたもいらっしゃるかもしれませんが、昨日会長が告知したとおり、今週から金曜日はスペシャルパーソナリティー……じゃなかった、曜日限定パーソナリティーで、会長の『妹分』の、わたくし板東なぎさが担当させていただくことになりました!

 最初は、聞き慣れないかもしれませんが、だいじょうぶ、きっと聞き慣れますから、きっと!!

 

 ――そうだ!

 今日はまだ見切り発車みたいなものですから、わたしひとりでしゃべりまくりますけど、ゲスト。ゲストさん呼びたいですね、いずれは! ゲストさん呼んで、いろいろお話を聞きたいです。短い時間ですけど。なんで、だれかゲストさんになって、【第2放送室】に来ませんか!? ギャラはないですけど、そうだ、イチゴ大福差し上げましょうか記念に。イチゴ大福美味しいでしょ、イチゴ大福。まぁ美味しいお菓子ならなんでもいいんですけど、ゲストに来てくれたかたには記念品としてそういったものをプレゼントしたいなあと思っております。

 

 ゲスト呼ぶって、わたしが考えた企画なんですよね。

 麻井会長の頭にはなかった発想みたいで。

 わたしのやわらかあたまが功を奏したみたい……なんちゃって。

 か、会長が石頭とかそういうことを言っているんではないんですからね!

 勘違いしないでよね!?

 ――だって怖いもん、会長ハリセン作って平気で叩いて来そうだから。

 ――これは、旧校舎のリスナーさんとわたしだけの、

 な・い・しょ・ば・な・し。

 アハハ~~。

 

 えーっと、のっけから少々飛ばしすぎた感があるので、もうひとつ考えてたことをやりたいなーと思います。

 それは、『朗読のお時間』。

 朗読コーナーって、ラジオ番組だとある種の定番なんですよね。

 まぁそれなりにわたしも読書、趣味なんですけど、自分だけで読みっぱなしじゃーもったいないし、つまんないので、読んだ本をこの放送で少しづつ朗読していったらきっと面白いと思って。

 人によっては退屈かもしれませんけど。

 いや、退屈にさせないように努力して朗読しますから。

 

 ちなみにウチの”同僚”の黒柳くんは、本を声に出して読むのが大の苦手で、現代文の授業なんかではいっつもつっかえているそうです。

 ――黒柳くんにもハリセンで叩かれちゃいそうですね。

 余計なことを言うのはやめましょう。

 で、肝心の朗読する作品は――、

 アーネスト・ヘミングウェイ

老人と海』。

 

 

『かれは年をとっていた。メキシコ湾流に小舟を浮べ、ひとりで魚をとって日をおくっていたが、一匹も釣れない日が八十四日もつづいた。はじめの四十日はひとりの少年がついていた。しかし一匹も釣れない日が四十日もつづくと、少年の両親は、もう老人がすっかりサラオになってしまったのだといった。サラオとはスペイン語で最悪の事態を意味することばだ。少年は両親のいいつけにしたがい、べつの舟に乗りこんで漁に出かけ*1……』」

 

 

 

 

*1:福田恆存訳・新潮文庫、5ページより