【愛の◯◯】腕相撲! せーのっ!!

利比古くんに「バカ」って言っちゃった。

 

わたしのバカ。 

 

 

それはそうとーー 

 

 

× × ×

 

・テーブルに置いた校内スポーツ新聞の原稿を見て、ため息をつくわたし

 

「ε-(´・_・`)ハァ…」

 

 

『どうかしたんですか』

 

 

「利比古くんだ」

「ハイ利比古です」

「……」

「……?」

「きのうは、ひどいこと言って、ごめんね」

「え?? ぜんぜん気にしてませんよ」

「細かいこと気にしないタイプ? もしかして」

「ん~、どうでしょうか」

 

「あのね」

「ハイ」

センバツが中止になっちゃったの」

高校野球ですよね。僕もニュースで知りました」

「せっかく丹精こめて記事書いたんだけどな~。

 

 出場する全部の高校の紹介記事も作ったのに。

 

 部の先輩とケンカしてまで作った紹介記事、だったんだけどな~~」

「スポーツ新聞部、ですよね?」

「そう。世界に一つだけの部活w」

「心底残念そうですね」

「わかる!? さすがおねーさんの弟」

「それほどでもw」

のってこないでよ

「ええ…」

「ご、ごめんごめん冗談冗談マイケル・ジョーダン

 

・困惑する利比古くん

 

 

嗚呼……何やってるんだわたし。 

 

 

・おもむろにテレビをつけるわたし

 

 

「きょうは一段とつまんないや。

 オープン戦もやってないし」

 

「あすかさん」

「なーに」

「お訊(き)きしたいことが」

「数学の問題?」

「いいえ」

「じゃー、なぁに?」

あすかさんは身長何センチですか

 

 

「…どうしてそんなこと訊くの」

 

 

「す、すみません、失礼だったでしょうか」

「すみませんって言わないのっ、

 そこは『ごめんなさい』って言うの。

 すみませんじゃ他人行儀だよ」

「ご、ごめんなさい」

「(・へ・)めっ」

「(恐縮そうに)はい…。」

 

 

NHKBS1に選局する

 

 

「それでーーわたしの身長の話だったっけ」

「あの、言いたくなければ言わなくても」

 

「ーー大相撲ってもうこの時間帯からやってるんだけど、」

「ほんとだ。でも観客がいない。なんか変ですね」

「無観客開催だよ」

「ああなるほど」

「かなりさびしい光景だよね」

「それで大相撲が、なにか?」

「利比古くん、

 わたしの身長だけど、

 腕相撲に勝ったら、教えてあげる」

 

「(; ゚д゚)」

 

 

 

第1ラウンド

 

「ほら遠慮しないの」

「わかりました…(腕を組む)」

「せーのっ!!」

 

 

 

第2ラウンド

 

「(気を取り直して)せーのっ!!」

 

 

 

第3ラウンド

 

「(弱気になりつつ)せ、せーのっ!!」

 

 

 

 

 

・利比古くんに1回も勝てなかった

 

 

「なんどやっても勝てない……。

 どうして?」

 

「あすかさん、手加減してませんからね」

「それはわかってるの」

 

「血筋か……」

「姉がどうかしましたか?」

「や、おねーさんも腕っぷし強いから、血筋かなーっと思って」

「(; ゚д゚)腕っぷし、って……!」

 

「でもいちばん腕相撲強いのはわたしのお兄ちゃんだから」

「それは、想像できます」

「利比古くんが100回やったら100回負けるよ」

「そうでしょうね」

 

 

「しょうがないなあ、負けたんだから言わないとね。

 

 155センチ。

 

「そうでしたか」

「なんの必要があってそんなこと訊いたの」

「お邸(やしき)の皆さんへの理解を深めようと思って」

「ウソでしょ」

「!?」

「(得意げに)ウソじゃないって言い張っても、わたしはウソだって思っておくからww」

 

 

「(困惑気味に)僕の身長も…言ったほうがいいですか?」

「どっちでもいいよ♫」

「(素直に)了解しました」

「ところで」

「はい…」

「次はなにで勝負しようかw」

「     」

 

「なにか言ってよ!w

 

 わたしの負けず嫌いな性格ーー嫌いじゃないでしょ? 利比古くん。」