・愛ちゃんと電話
「…そう、ケンカしちゃったのね、あすかちゃんと」
『お詫びにベルギーワッフル作ってあげた』
「そ、それはすごいわねw さすが愛ちゃん」
『アカちゃん、こんどお裁縫教えてよ』
「エッどうして?」
『お裁縫、わたしよりアカちゃんのほうがうまいじゃん』
「作りたいものでもあるの?」
『……いろいろと。
弟も、こっちに来るんだし』
「弟さんのために、なにか縫ってあげたいのね」
『まぁそういったとこ、だからいつか教えて、おねがい。
家庭科の成績、アカちゃんのほうが良いんだから』
(^_^;)いや…そもそも愛ちゃんオール5でしょ。
まぁ、いいか、こまごまとしたことは……。
× × ×
『おじょーさまー、お昼ができましたよーっ』
× × ×
・昼食
「ねえ蜜柑、あなた、高校時代の家庭科の成績は……」
「どうしていきなりそんなこと訊(き)くんですか?」
「いや、あのね、こっちの話」
「ふ~ん」
「ふ~ん、はやめて」
「残念ながら中学高校と一貫して5段階の5でした」
「残念がらないでよ」
「ーーお嬢さまが意外なのはーー」
「?」
「体育の成績が『5』なことです」
「な、なにか悪い、
運動神経だけじゃなくて、ほら、授業態度も加味されるんでしょう、
ほら、わたし体育の授業には、ずっと真面目に参加してるから」
「『ほら』って2回言ったw」
「…ごちそうさまでした」
「せっかくだからもうちょっとくつろぎましょうよぉ」
「しなくちゃならないことが山ほどあるの」
「お勉強ですかぁ? もうちょっとだけ、くつろいでからでもいいじゃありませんか」
「…きょうは、勉強は早めに終わらせて、」
「終わらせて、?」
「(食器を自分で洗いながら)4時になったら呼ぶわ」
「どこに?」
「わたしの部屋に決まってるでしょ」
「ふ~~んww」
× × ×
体育の成績が5であること。
これは、いつか、ハルくんに伝えたいと思っていること。
ハルくんに伝えたいと思っていることの中で、優先度はかなり高い。
× × ×
わたしの部屋
・約束の時間
『おじょーさまー、はいっていいですかー』
「やけに眠そうね」
「ムニャムニャ」
「ムニャムニャを声に出さない💢」
「へけっ☆」
「………」
「えぇとね。
ハルくんも、自宅待機で退屈だと思うのよ。
会うことも今は難しいでしょ」
「それで?」
「わ、
わたしの、
わたしの写真を、撮って送ろうと思うの」
「(ポカンとして)……もしかして、『自撮り』ってやつですか???」
「ちょ、ちょっとちがうんじゃないかしら?!?!?
じぶんで撮るんじゃなくて蜜柑に撮ってもらうんだし」
「アカ子さんも意外にだいたんですねえ」
「(聞き流して、)ファッション誌とか、通販カタログの写真みたいな感じに。
わたし身長高くないから、見栄えしないかもしれないけれど」
「見栄えはしますよ、だいじょうぶですよ」
「…安心した。
せっかくいっぱい洋服持ってるのに、宝の持ち腐れだから、いっそのことこういう機会に」
「前はそんなこと言いもしなかったのに、男の子ひとりいるだけで変わるものですね~~w」
「うるさい💢」
・最初に着る服を蜜柑といっしょに選んだ
「ーーそれじゃ蜜柑はいったん外で待ってて」
「どうしてですか?」
「どうしてもなにもないわよ、
着替えるから待ってて、ってことよ」
「試着室でもあるまいし」
「あ、あなた、出ないつもりなの!?!? 部屋を」
「別にいいじゃないですかぁ~」
「よくないわよ」
「いちいち着替えのたびに部屋を出たり入ったりするのめんどくさいですし」
「だめ、
めんどくさがっても、いちいち出たり入ったりして。」
「そんな恥ずかしがらなくてもwww」
「して!!! とにかく」