わたし小泉小陽(こいずみ こはる)。
大学1年生。
昨晩、中学高校の同級生で現在予備校生の八木八重子が電話で泣きついてきた。
しばらくなだめていたら落ち着いたけど、
差し迫る2度めの大学入試以外にも、何やら抱えてるものがあるみたい。
そして今日は、
なんと! わたしのマンションに、
おなじく中学高校の同級生の葉山むつみがやって来たのである。
「ポケモン発売されたねえ。やってるー?」
「『俺ガイル』の最終巻も発売されたわね」
「おれ…が…いる??」
「『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』っていうライトノベルの最終巻」
「へ…へぇ…ごめんよく知らなくて」
「小泉にしては疎(うと)いわね。テレビアニメにもなってるのに」
「ドラマとアニメは不得意なの」
「テレビ番組なのに?」
「残念ながら」
「(はーっ、とため息をつき)ま、いいわ」
やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 (14) (ガガガ文庫 わ 3-24)
↑本日発売!!!!!!!
「葉山、もしかして調子悪い?」
「ちょっと疲れただけ」
「…頑張ったんだね」
「…なにが。」
「このマンションまで来ること。」
「(ちょっとムッとして)そのくらいの体力はあるからっ。
…でもちょっと疲れた」
「わかった。休んでいきなよ。思う存分」
「……(沈黙)」
ーーご機嫌斜め、
というよりも、
調子の波が、
低くなってるみたい。
どうしてあげればいいかな?
× × ×
(ぐっすりと寝ていた葉山がゆっくりと眼を覚ます)
(しかし、なかなか起き上がれず、まどろんでいる様子)
「はーやまっ」
「小泉…いけない、わたし、」
「無理しちゃだめだよ、葉山」
「わたしなにもむりしてない、
でも……気持ちがこわばってるんだと思う」
「不安なんでしょう」
「やっぱりわかったみたいね…」
「『先が見えない病』」
「うまいこと言うね、小泉は」
「こわばってるんだったら、気持ちがほぐれるまで休み続けるんだよ。
決して焦らないで」
「あんたにそんなこと言われる日が来るなんてね」
(葉山の真横で寝っ転がる)
「わたしが『いい』って言うまで起き上がっちゃダメだよ」
「…なにそれ」
「いいから休むの!w」
「……」
「……」
× × ×
「暗くなってきちゃった」
「まだわたし『いい』って言ってないよ」
「暗いと…心細いから」
「わたしがいても?w」
「…ごめん」
「わかった。
じゃ、電気つけるついでに起き上がろっか。
ゆっくりね。
手、貸してあげる」
× × ×
「わたし…こんなんじゃ…社会の足手まとい……」
「こらっ、そーゆー考え方しないっ」
「じゃあわたしってなんなの、なんなのよ、小泉」
「んー?
あさって、11月21日が誕生日の、美人でかしこくて料理とピアノも大得意で、そのほかいろいろと魅力的な、健気でほっとけない女の子」
「けな…げ?
あっ」
「ど、どした、葉山」
「あさってが誕生日なの忘れてた」
アチャー。
こりゃ、相当まいってんな~。
自分の誕生日忘れるなんて。
どうしてあげればいいかな?
「ふーーーーーーーーーーーーーむ」
「ど、どうしたのよ、腕組んで、考え込んだみたいに」
「や、おかあさんどうしよっかなーって」
「おかあさん!?」
「そ。わたしが今だけ葉山のおかあさん。エプロンも着たし」
「ほんとだ。小泉、エプロンなんて持ってないかと思ってた」
「ちょっとまってねー。おかあさん考え中だから」
「な、なにを考え中なの」
「きょうの晩ごはん」
「じょっ…冗談言わないでよ」
「ごめん、冗談w
…!
(手を合わせて)おかあさんひらめいちゃった!!!」
「ーーえ?」
「戸部くんと羽田さんにも、葉山のおかあさんになってもらうの」
「(^_^ ;;)ーーい、いや、戸部くんはおかあさんじゃなくておとうさんでしょ、性別的に」