【愛の◯◯】友情よりも努力よりも勝利よりも……勇気。

お元気ですかー!? 戸部あすかです!! えっ、「きのうの当番もきみだったよね」って?  なんの当番なのかわたしにはよくわからないですが、2日連続の登板であるのは事実です!

 

え? 「ローテーション結構ガバガバだよね」って? よくわかりません!! すみません!!

 

ーーつ、つい取り乱してしまいましたが、きのうはスポーツ新聞部のセンパイのうち、中村創介(なかむら そうすけ)部長以外の3人を紹介したのでした。

となると、残るは中村部長の紹介になるはずなんですけど、きのうにひきつづいて、中村部長がどこかに消えてしまったのです。

 

それでわたし、必死に中村部長を捜索しているところなんです、今…。

 

・校舎

 

「あっ、発見!!

 

× × ×

 

「部長、見つけましたよ、もう逃がしませんよ!!」

「……」

「部活に行きましょうよ!」

「……」

 

(・・;)あれっ?

 

中村部長、

なんかイラついてる?

 

だって、そんな表情。

舌打ちでもしそうな感じに、イライラしてる。

 

部長っぽくないーー、

ストレス?

やっぱり、受験前特有の、ストレスみたいなものが、表に出ちゃってるのかな。

でも、それはやっぱり、部長っぽくないーー。

 

ちくしょう

「(ビクン)」

「ああ、つい口に出ちゃったね、イライラしてるのが。

 ごめんあすかさん」

「(・・;)あの、無理に部活に出なくても、学業、というか受験勉強優先で…」

「ボクはそんなことでイライラしてるんじゃないの」

「Σ(・・;)えっ」

ジャンプが」

「じゃ、ジャンプが?」

「ジャンプが…、

 ジャンプが…、

 

 売り切れだったorz」

 

「(-_-;)部長のストレスの原因、もしかして」

「orz そう、ジャンプが売り切れで読めないこと」

 

「(-_-;)……、

 (^_^;)…き、『鬼滅の刃』が人気出過ぎで、売り切れちゃったんでしょうか」

『鬼滅』は関係ない

「Σ(^_^;)ビクッ」

「orz 鬼滅のせいじゃない…連載漫画や編集部のせいじゃない…おれの力が至らなかっただけだ。

 おれがコンビニにもう少し早く行っていれば!!

 おれに空が明るくなる前から起床できるガッツがあったなら!!

 

 ちくしょうちくしょう(廊下をガンガン叩く)」

「ろ、廊下を叩かないでください」

「あすかさん、週刊少年ジャンプの三原則は知ってるよね」

「友情・努力・勝利…でしたっけ?」

「(大声で)努力!!!

「ヒエェッ」

「努力が足りなかった、努力!!!

 

あ、

中村部長が廊下を殴ったはずみで、

部長のカバンから、

部長の志望校の赤本が、転がり出た。

 

「orz 安西先生…ぼくはまるで成長していませんでした…ジャンプが、ジャンプが読みたいです……」

「部長」

「orz」

「ジャンプも大学受験も、あきらめたらそこで試合終了だと思うんですけど、」

「う」

「(赤本を見せて)この大学、偏差値どれくらいなんですか」

「(赤本をさりげなく奪い取って)あ、ああ、そんな高くないよ。無理して勉強して入るような大学ではない」

「それって、つまり、いわゆるボーダーフ」

じ、地元では、わりと有名らしいぜ!?

 

 

ーー、

中村部長の言う『地元』とは、

九州地方のことなのだ。

 

そう、

中村部長の志望校、

実は福岡県の大学なのです。

 

つまりーー、

もし、部長が志望校に合格したら、

部長は福岡に住むことになる。

それは、つまり、

もちろん部長がここ(東京)を離れて、はるか九州の福岡に移り住むということであって、

そのことが、なにを意味しているかというと、

 

中村部長と、

マオさんが、

離ればなれになってしまうということ。

 

マオさんは、卒業したら、実家の『笹島飯店』を継ぐ。

中村部長は、大学に合格してしまったら、九州に飛んでいって、

マオさんの近くから、いなくなってしまうーー!

 

 

「部長。」

「はい…。」

「部長は。

 ジャンプとマオさんの、どっちが大事ですか?」

 

「…それは、答えるまでもない」

 

「い、言ったんですか、もう、マオさんには」

「うんにゃ」

「でも、いつかは言わなくちゃ、部長!」

 

苦虫を噛み潰したような顔になる、部長

 

わたしは…、

友情も、

努力も、

勝利も大事だけど、

 

勇気だって、大事だと思う。 

 

自分を信じて、部長。

ジャンプの主人公が自分を信じるみたいに、自分を信じて。

勇気を振り絞ってください。

マオさんに、打ち明けてください。

 

マオさんーー、

悲しむかな。

泣くかな。

 

でもーー『ここから先』は、

部長とマオさんの問題。

わたしが踏み込んじゃいけない。