【愛の◯◯】小学5年生の感想。JKってよくわかんねーや

おれ、長野源太(ながの げんた)

 

小学5年生。

 

好きな教科は、社会。

 

ちょうど1年ぐらい前

児童文化センターで、

とあるJKのねーちゃんと出会い、

日本史の話しをした。

 

それから数カ月後

たしか2月だった、

そのJKのねーちゃんに、

また児童文化センターで出くわして、

エレクトーンで米津玄師のLemonを弾いてもらった。

 

それ以来、

児童文化センターには、

行っていなかった。

 

だけど、

小学校でとあるウワサが広まっていて、

そのウワサを確かめるために、

ひさびさに、きょう、放課後、

おれは児童文化センターにやってきたわけだ。 

 

「彼女」は、

そのウワサの張本人であるJKのねーちゃんは、

おれが来てから30分後、センターの入り口の自動ドアに、

すがたをあらわした。 

 

「こんにちはー、

 

 

 

 !!

 

「やぁ」

「ひっ久しぶり!! 去年の冬以来じゃないの!?

 何やってた? 元気してた?」

「そっちこそ」

「そもそも、どうしてここに来たの?」

「来ちゃ悪いかよっ」

「ごっごめんそうね、そうね、

 でもなんだかあんた、わたしを待ちかまえてたみたいーー」

「そうだよ」

「どして?」

「そのまえに『あんた』はやめてくれ」

「名前で呼んでほしいってこと?」

「ーー源太って名前が、あるんだけど、」

「ゲンタくんね」

「漢字だと、源氏の『源』に太郎の『太』」

「わざわざ説明ありがとう」

「…」

「ど、どしたの」

「…くん付けはあんまり好きじゃない」

 

「えっ……。

 

 わたし、じぶんの弟以外の男の子、呼びすてにしたことない…」

 

「そんな困った顔しないでくれよぉ」

 

「………やっぱ、くん付けにするね、源太くん」

「なんで?」

「ーーそれよりも!

 源太くんはどうしてわたしが来るのを待ってたのかな?」

「ねーちゃんの目撃談」

「(ギクッとなって)あ、あっちゃー、バレちゃったかー」

「ねーちゃんがここに通ってること。

 それに加え、

 ジョギングしてたとか、サイクリングしてたとか、

 プールに泳ぎに来てたとか、いろいろ」

「そ、そんなにあるんだ、目撃談」

「だからねーちゃんがほんとにここの常連なのか確かめたかっただけ」

「バレたか」

「ねーちゃん、高校でぼっちなの?」

「ぼっち、って、ひとりぼっちってこと?」

「そこからかよ」

「そんなわけないでしょ」

「完全否定かよ」

「あなたこそ、前に会ったときは2回ともひとりで来てたよね、

(なぜか心配そうに)友だち、いないの」

「…いないんじゃない。

 でも、小学生は、いろいろいそがしいんだ」

「たとえば?」

「塾とか」

「受験の?」

「そう、中学受験」

「わたしも中学受験していまの学校に入ったのよ」

「知ってるよ。名門なんだろ」

べつに?

「ねーちゃん髪が長すぎるよ。きびしくないの? そんなに伸ばすなとか言われないのかよ」

べつに♫

 

× × ×

 

「…まあ、友だちと遊べなくて、さみしくなったら、ここに来ればいいんじゃないのかな。そのための、児童文化センターなんだし」

「さみしくねーよ」

「ウソでしょ」

「…べつに」

 

「なー、ねーちゃん」

「わたし『ねーちゃん』っていう名前じゃないの」

「バカっ知ってるよ。教えてくれよ、名前を」

「言った気がするけど」

「バーカ忘れてるに決まってんだろ、何ヶ月前だと思ってんだよ」

「『バカ』って言わなくなったら教えてあげる」

「やだ」

バカ!

 

「…ほんとにかしこいのか? ねーちゃん」

「(恥をかいたような顔になって)…はねだあい、

 羽田空港に、恋愛の愛。

 愛って漢字、書ける?」

「うん」

 

「……どうして書けるの……」

「ナメてんのか💢」

「(スケジュール手帳みたいなのを出して)じゃあここに書いてみて」

 

(書く)

 

「…うん、あんまり字はきれいじゃないけど、あってる」

「愛ねーちゃんって呼ぶぞ」

「そうね、みんな『アイねーちゃん』って呼んでるから」

「どんだけなじんでんだよ、センターに。

 やっぱぼっちなんじゃないの!?」

「ちがうから。女子高生もいろいろいそがしいんだから」

「恋愛とか?」

 

 

「源太くん、あなた何年生なの…」

「5年だよ」

卓球

「は!?」

卓球、やりましょ?」

「はぐらかす気かよ!?

 図星、ってやつかひょっとして!?」

「いい言葉を習ったわね」

「あんまりいい意味じゃないんじゃないのか、『図星』って」

てかげん、してあげるから」

「そんなに卓球やりたいのかよ!?」

「(立ち上がって)いっとくけど、わたし強いわよ、てかげんしないと源太くん勝てないんだから」

「どこ行くんだよ」

「卓球場にきまってるでしょ」

「おれが勝ったらエレクトーン弾いてくれよ」

「いいわ。

 でも源太くんが勝つまでに、わたしは何連勝するかしら」

「キレてんのかテンパってんのかわかんねーぞ、愛ねーちゃん」

「フフフ…w」

「なに笑ってんだよ」

 

 

 

 

 

× × ×

 

ところがーー、

 

愛ねーちゃんは、

ほんとうに強かった。