【愛の◯◯】ブラックアウト

皆さん、きょうで10月も終わり、ですねえ。

今年もあと2ヶ月ですかー。

早いですねー、

 

えっ、

「あんたは誰」って?

 

蜜柑です。

アカ子さんの家でメイドみたいなことをやっている、

蜜柑です。 

 

今週、火曜日に続き2度めの登場なわけですが、

ーー、

「ヒマなんじゃねぇのか!?」

なんて言わないでくださいね。 

 

火曜日、 「男女共学の高校に通っていた」ということはお伝えしたと思います。

 

男の子がいたから、

男の子のことで、云々ーー、

みたいなことも、

ほのめかしましたっけ。

 

 

せっかくだから、「男の子のこと」について、

もう少し皆さんにお話ししておきましょうか。

ーーアカ子さんには秘密ですよ?

 

× × ×

 

高校時代。

 

自分でいうのも何ですが、

わたしは結構、異性に好意を持たれることが多かった気がします。

つまり、モテてたんですよ。

 

外見が目当てだったのか。

身体(からだ)が目当てだったのか。

うわべではなく、「中身」を気に入ってくれて、わたしを好きになってくれた人は、

残念ながらーーそう多くはありませんでした。

 

結構な頻度で、告白されたり、告白の長文メールをもらったりしていました。

それで、交際しなかったり、交際したりしていたわけですけれども、

交際が始まっても、長続きすることはありませんでした。

 

こちらから飽きて破局したのと、あちらのほうが飽きて破局したのと、どちらの場合が多かったのかは、秘密です。

 

「持たれる」ばかりではなく、わたしが好意を「持つ」こともありました。

 

けれど、ほんとうに心から好きになった男の子はーー、

Kくん

Kくんひとりだけでした。 

 

Kくんはクラスメイトでした。

Kくんは、決して華やかな存在ではありませんでした。

勉強もスポーツも、特別秀(ひい)でているわけではなく、何ごとにつけてもそこそこ…といった感じで、クラスの中では「脇役」だったと思います。

でもわたしだって勉強もスポーツも特別秀(ひい)でているわけではなかったし、何ごともそこそこなKくんに、むしろシンパシーを感じていたのです。

そのシンパシーは日増しに大きくなっていき、夢の中にKくんが出てきてベッドからはね起きるといった「事件」もありました。

 

しだいに、

『Kくんより人気の男の子はクラスに何人もいる。

 わたしがKくんを気にしている、Kくんのことを観てるなんて思ってる同級生はだれもいない。

 でも、わたしこそが他のだれよりもKくんのことを考えているんだ。』

というふうな、危険な考えが、わたしのなかに芽生えてきました。

 

ウソいつわりなく、Kくんにわたしは心から想いを寄せていました。

だけど、

『Kくんに対するわたしの想いをだれだってなんだって邪魔できない、いや、邪魔なんて入るはずがない、ありえない』

というわたしの「確信」は、まちがっていました……。

 

× × ×

 

『何の用、永井(←わたしの苗字)?

 こんな校舎のすみっこに呼んで』

 

『あ、あのっ、Kくん、もしかしたら、こんな場所まで来ちゃったら、Kくんは感づいちゃってるかもしれないなー、なんちゃって。』

 

『ーーー』

『………』

 

『なんかきょうは永井らしくないな。

 いつもはもっとハッキリしゃべってるじゃないか。そんな、口ごもったようなしゃべりかたじゃなくって』

『それには、理由がある…かなー、って』

『じゃあはっきり伝えてくれよ。

 そんな言いかたしかしないんじゃ、おれ、おまえの話、聴かないよ。』

 

『Kくん。

 じゃあ、言うよ。

 

 

 

 す』

『す?』

 

『ーー、

 

 す、

 す、

 

 好き、

 Kくんのこと、

 すごくすごく好き、

 Kくん、わたしとつきあって、

 わたしとーー、

 

 

 

 

 

…ごめん

 

 

 

 

 

 

 

 

わたしは、雷に打たれたかのように愕然としていました。 

 

 

 

 

『ごめん、断る』

 

 

 

『……なんで?』

 

 

 

おれが好きなのは、おまえじゃないんだ

 

 

 

なんで?

なんで?

なんで…! 

 

わたしは度を越して混乱しており、

何ごとか大声で泣き叫ばんばかりにわめき散らしていたのを、

昨日のように思い出すことができます。

 

 

 

しかし、わたしがいくらKくんにわけもわからない言葉、言葉になっていない言葉を大声で浴びせかけても、

彼は動じることなく、

しだいに、わたしの視界から遠ざかっていくばかりでした。

 

わたしの「電源」はブチンと切れて、文字通り眼の前が真っ暗になって、しかもだれも助けてくれませんでした。

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

わたしが、『グレート・ギャツビー』を読み返して号泣したのは、 

たぶん、人生最大の失敗と絶望を同時に味わった、そんな失恋体験から少し経ってからのことだったと思います。