【愛の◯◯】うちのメイドとケンカした!

はいどうもー、

アカ子ですよ!

 

……、

約1ヶ月ぶりの登場みたいなんですけど。

 

嫌われてるのかしら、わたし?

 

しかも、

しかもですね、

わたし、

きいてくれませんか、

わたし夏風邪をひいてしまったんです。 

 

約1ヶ月干されたうえに、この仕打ちですか…!

 

「どうしたんですか? 怒ったような顔して」

「ギクッ」

 

「け、形而上学的なことを考えていたら、ストレスが出てきたのよ。」

形而上学的? なんじゃらほい、ですねえ」

「どうせ難しいからわかんないわよ、蜜柑には」

「えーっ、それってわたしが頭悪い、ってことですかー。

 (勝手にわたしのベッドに腰掛け、)ひどいですお嬢さまぁ~」

「泣き真似しない💢」

怒ると風邪が長引きますよ!

わかってるわよ!!

 

 

なんか、言い合いみたいな雰囲気になって、

気まずい沈黙が流れた。 

 

 

 

「(事務的な口調で)愛さんには、お断りの電話をしておきましたよ」

「うん。

 残念だけど。」

「ーーで、代わりにだれに来てもらいますか?」

「はぁ!?」

「お見舞いに。」

「ど、どうせ『ハルくんはどうですか?』とか、”けしかける”心積もりだったんでしょ!?

 そんな色恋沙汰が好き? ねぇ!!

「(怒りっぽい口調になって)わたしはそんなことひとことも言ってませんが!

どうせこれから言うつもりだったのよ!!

言うつもりも何も、最初っからそういうこと思ってませんでしたから!!

 もう勝手にひとりでアタマ冷やしたらどうですか!?

 

 (ベッドから立ち上がり)そのほうが夏風邪も勝手に逃げていく気がしますけどね💢

 もうめんどう見切れません💢💢

 

 

「蜜柑」

「…(黙って部屋のドアに向かう)」

 

「待って、蜜柑」

「(ドアノブを持ちながら)……」

 

「わたし、それでこそ蜜柑だと思うわ」

「(ドアノブを持ったまま)……『それでこそ』、ってなんですか、どういう意味ですか」

「ケンカするほど仲がいい、ってよく言うじゃない。

 もっと怒ってよ、蜜柑」

「はいぃ!?」

「あなたにはただのメイドでいてほしくないのよ……」

「こんなウザいメイドで満足なんですか」

「満足とかそういう問題じゃないの。

 好きなのよ……なんだかんだで、あなたみたいな存在が」

 

「(ベッドを振り向いて)……おじょうさま?」

「あなたとわたし、ときどき言い合いのケンカに発展するくらいの関係が、ちょうどいいでしょ。そう思わない?」

「あなたはわたしに何を期待してるんですか。

 天涯孤独で、学歴もなく、口の悪い住み込み働きのーー」

「そこまでにしときなさい」

「……」

「ね、わたしとあなたの仲でしょ、長い付き合いでしょ」

「で、でも、『親しき仲にも礼儀あり』と」

「ケースバイケースよ、この場合、礼儀なんかいらないわ。

 ーーねえ、ここ(←ベッド)に座ってよ、蜜柑」

 

(蜜柑はどさぁっ、と無造作にベッドに腰掛ける)

 

「ね、遠慮なんかいらないでしょw

 それでーー、」

「それで? どうしたいんですか?」

「……わかってるくせにっ」

「ま、『長い付き合い』ですしねぇww」

 

 

 

 

 

 

 

『もしもし……ハルくん?

 

 わたしよ。

 

 そう、アカ子。

 

 変な声でごめんね、風邪ひいてて。

 

 …そうよ、風邪なの。

 

 …! 

 …ありがとう。

 

 

 それでね、ハルくん、

 ハルくん、その、

 よ、要件はねーー』