おれ、岡崎竹通(おかざき たけみち)。
高校2年生。
「スポーツ新聞部」っていう、ヘンテコな部活に入っている。
夏休みとはいえ、うちの部活は活動をやめない。
陸上部の取材を終えて、部室になっている教室に帰ろうとする途中、野球部のグラウンドで、うちの部活の1年生である戸部あすかさんの周りを、野球部員の男子が取り囲んでいる光景を見た。
まるで、彼女の魅力によって、自然に彼女の周りに「輪」が出来上がるみたいな、そんな様子だった。
部室の教室
帰ってみると、同級生の瀬戸宏(せと こう)が来ていた。
「よぉ岡崎」
「瀬戸。」
「あっついなあ」
「ほんとよな」
「ほかにだれか、きょう来てる?」
「あすかさんが来てるよ」
「ここにいないってことは取材中ってことか。たぶん野球部だろ」
「ピンポーン。
さっきグラウンドで取材してた。
なんだかーー女子アナみたいだったw」
「なんだそのたとえw」
「不思議なのはさぁ、なんか、あすかさんがグラウンドに行くと、野球部の男子の表情が明るくなる気がするんだよ」
「それ、野球部限定じゃ、なくね?」
「たしかに。」
「でも本人は、その”現象”に、あまり気づいていない」
「たしかにw」
そこに、これまた同級生の一宮桜子(いちみや さくらこ)が入室してきた。
「(仏頂面で)…なんだか、ついさっきまでウワサ話してたみたいな雰囲気」
「バレたかw でも、桜子のことじゃないよ」
「瀬戸くん、そうやって念を押せば押すほど疑わしくなるんだよ」
「Σ(^o^;)」
「瀬戸は嘘言ってないぞ、あすかさんのことだよ、さっき野球部の…」
「いやらしいよ、岡崎くん」
「え!?」
「(意味深な口調で)自分の胸にじっと手を当てて考えてみて。」
「???????」
桜子は……、
なんだか、言語が、飛躍している。
「で、でも! 桜子も思わないか!? あすかさんが運動部の男子にチヤホヤされてるって。
さっき見た野球部の歓迎ぶりもすごかったんだぞ。あすかさんを取り囲んでーー」
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『へっくしゅん!!
ーーあ、あれ、こんなに暑いのにクシャミしちゃった』
(あたたかい笑いに包まれる野球部グラウンド)
『戸部さん、お兄さんは元気か?』
『はい。愚兄はバイトを始めるようです』
『『愚兄』なんて言っちゃだめだよ~!ww』
(ふたたびあたたかい笑いに包まれる野球部グラウンド)
『でもほんとうに、お兄さんはスーパースターだったんだよ』
『そうだよ。もっと尊敬したほうがいいよ』
『…………そ、そうでしょうか?』
(みたびあたたかい笑いに包まれる野球部グラウンド)