戸部くん邸
の
玄関
♫ピンポーン♫
<ガチャリ
「やぁ葉山」
「あら戸部くん。羽田さんは?」
「それが……愛のやつ、
『まだ髪が乾かないから』って、
部屋に引っ込んじまった」
「あらw」
× × ×
居間に通される
羽田さんもやってくる
「おくれました。ごめんなさい葉山先輩」
「シャワー浴びてたんだww」
「えっどうしてそれを!?」
「戸部くんが」
「あんにゃろ💢」
「いいじゃないのww」
「晩ごはん作ってあげないんだから💢」
「それはあまりにもかわいそう…」
「元気? 羽田さん」
「…………」
「あれ」
「(-_-;)…………」
「何も言えない、ってことは、うまく行ってないことが、なにかしらあるのね」
「わかりますか」
「『どうしてわかるんですか…』って言わないんだw」
「時と場合によりますっ!!」
羽田さんは、読書と学業の不調を訴えた。
「でも、読書も学業も、波があるものじゃない」
「読書は、わりとよくなってるんですよ。でも学業が…!
期末テストで、また成績落としちゃった、悔しい、わたし」
「そういう羽田さんの負けず嫌いなとこ、わたしは好きだよ。
戸部くんも、あなたの負けず嫌いなところーー好きなんだと思う」
「(゜o゜; どうしてわかるのセンパイ……。」
「(;^_^)……」
「でも、センパイ、読書はともかくとして、高校時代、学業に『波』なんてあったんですか」
「そうねえ。掲示板を外したことはなかったかな」
「け、掲示板!?」
やべっ。
「ご、ごめんなさい、わけわかんないこと言っちゃって、
『学年5位以内はいつもキープしてた』って意味」
「それわたしより安定してるじゃないですか」
「6位以下だったの? 期末」
(首を縦に振る羽田さん)
「でも二桁(ふたけた)着順じゃなかったんでしょ」
「ちゃ、着順!?」
「(;-_-)……い、いろいろごめん羽田さん。趣味に走りすぎた」
「学年9位でした」
「ベストナインじゃん」
「そういう問題では…」
「ほら、去年の文化祭のまえに、わたしが電車内でぶっこわれちゃったことがあったじゃない?
ぶっこわれたあとのテスト、わたし学年84位とかだったよ」
「それは…仕方ない面も…」
「それにさ、1位にしろ5位にしろ9位にしろ84位にしろ、『数字』に神経質になりすぎるのもどうかと思うよ。
点数にしたってそうでしょ?」
押し黙る羽田さん。
「……とか言っときながら、『数字』に神経質になってるようなこと言うけど、」
「(;´Д`)は、はい!?」
「わたし身長160.5センチなのよ」
「わたしも160.5です……!」
「アンは知ってたみたいね」
「それは、傍目(はため)から見てたら、わたしとセンパイの体型が似てることぐらい、わかってるだろうし」
「『似てる』というかーー、
ほとんど『同じ』だよね」
「たしかに」
「アンはわたしとあなたの体重とスリーサイズも知ってたんだけど」
「同じくらいですよね」
「うん、僅差」
「…で、はなしが見えてこないのですが」
「体型がほとんどいっしょってことは、わたしはあなたの服が着られて、あなたはわたしの服が着られるってことでしょ」
「き、着たいの、センパイ!? わたしの洋服w」
「まんざらでもない顔してるじゃないの。
一度やってみたかったんだ~」
「た、たしかに、わたしやってみたいかもしれない、お洋服のとりかえっこ、ってやつ」
「気分転換になるでしょ」
「なりますねえ」
× × ×
「おーい、ふたりとも、アイスクリーム買ってきたぞぉ……!?」
『(ふたり同時に)おかえり、アツマくん!!』
「そ、そうか、その手はなかった。
『天気の子』の公開ももうすぐだし、新海誠作品の影響で、男女の中身が入れ替わる、っていうネタの発想は安直(あんちょく)だが、
女同士、着ている服を入れ替える、とは、マニアックな…!」
「むりやり新海誠にかこつけなくてもいいじゃん💢」
「時事性を取り入れたいと思って」
「なにこのブログの中の人みたいなこと言ってんの!?💢💢」
「まぁまぁ、そこまでそこまでw
戸部くん、似合ってる? コレ」
「アツマくん、わたしはどう? 似合ってるかな?」
「( ;'д`)ウーン…」