あたしルミナ。
大学生。
2日連続の登場。
今日の舞台は、児童文化センターじゃなくて、大学。
自分のサークル『虹北学園(こうほくがくえん)』の部室で、あたしは本を読んでいた。
ここは、児童文学専門のサークル。
だから、絵本の読み聞かせのボランティアなんかもやったりするの。
ところで、この部室、「騒音問題」に悩まされている。
構造上の欠陥があるのかどうか知らないけど、隣にある怪しい音楽聴き専サークル『MINT JAMS(ミント・ジャムス)』が大音量で流す楽曲の音が、こっちの部屋まで流れ込んでくる。
集中力のさまたげ。
迷惑ったらありゃしない。
しかも、『MINT JAMS』の現在の中心人物は、よりによって、幼なじみの男子の、ギン……。
(バーン! と、『MINT JAMS』のドアを開ける)
「ギンばかっ、そっちの音が大きすぎるって100万回言ってるんだけど💢」
「……ポニーテール?」
どどどどどどどっくんどっくん
「だ、第一声がそれ?」
「(さりげなくボリュームを下げながら)だってふだんは髪、留めてないじゃん」
「気圧の関係で気分を変えたかったの」
「変だなあw」
「おや、ルミナちゃん、ポニテでお出ましですか」
鳴海が来た。
ギンの悪友。
「悪い? 鳴海」
「なんに感化されたんだかww」
「なぐるよ鳴海!?」
× × ×
あたし「戸部くんいないって珍しくない」
ギン「そりゃあ授業さ、授業」
あたし「講義って言いなさい💢」
鳴海「細かいなあルミナちゃんは」
あたし「鳴海は未来永劫だまってて!!」
『MINT JAMS』の部室では、ヒップホップが際限なく流れ続けていた。
あたし「きょうはラップの日なの?」
ギン「ヒップホップ強化週間なんだ」
鳴海「そ、そ、」
あたし「アホじゃないの!?」
あたし「さっきからどれも同じようにしか聞こえない。
英語聞き取れないし。
しかもヒップホップってメロディってもんがないじゃん」
ギン「それはおまえがヒップホップを聴き慣れてないからだよ」
あたし「歌詞わかるの? ギン」
ギン「いんや」
あたし「(*'д'c彡☆))Д´)ボカーン」
鳴海「でも、海外の潮流は、ロックよりも、EDMやヒップホップ…って感じじゃないの」
あたし「鳴海はだまってて」
ギン「(^_^;)うーん事実、EDM・ヒップホップ、このあたりに比べて、Spotifyなんかでも、ロックは『冷遇』されているまであるなあ」
あたし「憶測じゃん」
ギン「憶測だねえ」
あたし「(*'д'c彡☆))Д´)ボボボカーン」
× × ×
鳴海が立ち去っていったので、ギンとふたりきりになった。
「ここ数年来の疑問だが」
「ここ数年来ってすっっごく微妙じゃないの」
「ルミナはどんな音楽聴くのさ」
「……ジャニーズやAKB系は聴かない」
「いや、何を『聴かない』かじゃなくて、何を『聴くか』語ってくれよw」
「……ここ1年間ぐらいは、90年代の売れ線J-POPを…」
「具体的に言ってくれよ、
幼なじみだろ?」
ーーバカじゃないの!?
「ねえギン、そのPCちょっとさわらしてよ」
「いいけど、なんで」
「Spotifyに、たぶん、あたしが今朝聴いた曲が入ってると思う」
(曲を検索するあたし)
「あ、これだ!」
「(。・ω・)ほほー。
My Little Loverの『Free』か」
♫『Free』♫
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「これアルバム曲だろ。
おまえさっき『90年代売れ線J-POP』って言ってたけど、なかなか渋いところ選ぶじゃあないか」
「それはどうも。
このアルバムのジャケット色みたいな『渋さ』ね」
「うまいこと言うなあw」
「ところで、ルミナおまえ、今朝この曲しか聴かなかったの?」
「うん」
「一曲だけ?」
「うんそうだよ」
「意識高いな」
「(゚Д゚)ハァ?」
「シャッフル再生で次々と楽曲を流し込むように聴いていく『デジタル定額配信サービス文化』の流れに棹さすーー」
「ギンwwwwwwww」
「そんな笑うところか」
「『流れに棹さす』の使いかた間違ってるひと、リアルではじめてみたwwwwwwwwwwwwww」
「(´・д・`)ショボーン」