戸部邸
夜
♪コンコンコン♪
「あすかちゃーん」
『(無言)』
「あすかちゃん? 一緒にテレビで交流戦観ない? ほら、スポーツ新聞に書くネタとかも、できるでしょ」
『……』
( ˊᵕˋ ;)あ、あれ??
『取り込み中です…』
「宿題?」
『…そんなところです』
× × ×
♪コンコンコン♪
「あすかちゃん、宿題わからないところがあったら、教えてあげようか?」
『そんなんじゃないんです』
( ˊᵕˋ ;)えっ。
『宿題よりずーっと難しい宿題なんです』
「???」
× × ×
♪コンコンコン♪
「ーーもう、おねえさん心配になってきたよ」
『………』
「『宿題より難しい宿題』がなんなのか、当ててあげようか」
『………』
「お裁縫でしょ」
『……(弱音を吐くように)入ってきてください。』
× × ×
「どうしてわたしが裁縫してるってわかったんですかっ」
「だって指にバンソーコー貼ってたじゃん、あすかちゃん」
「(>_<;)……」
「『手伝ってください』って、なんで言わなかったの?」
「自分だけでカーテン縫い合わせられないと、負けちゃうって思ったから」
「負ける? だれに?」
「それは………………、その」
「怒らないから言ってごらん?」
「……いやです、言いたくないです」
「言わなきゃ縫ってあげないよーだ」
「おねーさん、ちょっと無神経じゃないですか」
あっ。
まずっ。
あすかちゃんの、触れてはいけないところに触れちゃった?!
「(´・_・` )いいです、無理に縫ってくれなくても。おねーさんはDeNAの応援したらいいじゃないですか」
「あすかちゃん、わたし、『誰に』負けたくないか、もうわかっちゃってるんだ」
「どうせアカ子さんですよっ!!」
「ちょ、び、びっくりするじゃないの、あすかちゃん。
ーー泣いてるの?」
あすかちゃんが、
こんなに本気で泣くところは、
はじめて見たかもしれない。
「ごめんね、わたしが無神経だった、『言わなきゃ縫ってあげない』とか」
そう言い繕(つくろ)って、
それでもって、カーテンの破れたところを縫い合わせてあげたけれど、
アカちゃんみたくキレイに縫えなかったし、
なんだかーー1年前みたく、
あすかちゃんとの間に、「ほころび」が生まれそうで、こわい。