6月12日。
水曜日。
放課後の時間帯から、ぱらぱらと雨が降り始めてきた。
戸部邸
「ただいまーぁ」
「おー、あすかじゃん、おかえりおかえり……」
「(💢・-・)なんでお兄ちゃんがいるの?」
「(`-д-;)は!? 大学生だって言ってるだろ」
「(💢・-・)ちょっと言ってる意味わかんない」
「お前もな…」
「ま、いいや。わたし制服がちょっと濡れちゃったから着替えてくる」
「おーい妹よ、先に帰ってたのにはワケがあってだな」
「知・り・た・く・な・い」
わたしの部屋
「( ´д`)はーっ、」
もうちょっと、お兄ちゃんに対して、素直になったほうがいいのかもしれない。
16歳になったんだし。
× × ×
♪ゴンゴンゴン♪
「Σ(゚ロ゚;)ビクッ!」
「もしかしてお兄ちゃん!?」
『ああ。』
「なんの用?
入ってきたら死刑だよ」
『なぜに』
「上半身、ブラだけだから、制服が濡れたっていったでしょ!? さっき」
『おまえなあ……ブラだけだから、とかわざわざ言わなくてもいいだろ、「着替えてる途中だから」でいいだろ』
「いいじゃん、きょうだいなんだし。
で用件なに」
『アカ子さんが来てくれたぞ』
「えええっ?! なんで?!」
『この前、おれが買い物についてきてくれたから、お礼を持ってきたって』
「……………」
『買い物』って、
ハルさんに服を買ってあげた時だ、
アカ子さんが、
ハルさんに……。
どうしよう、
なぜだか分からないけどドキドキしてる。
降りて、アカ子さんと顔を合わせるなら、
ブラも替えたほうがいいんだろうか…。
50分後
「あ、あかこさん、こんにちは……」
「おい! アカ子さん待たせんなよ、どんだけ服着るのに時間かかってんだよバーカ」
「(>_<;)クッ……」
「ぜんぜんいいのよあすかちゃん」
「ご、50分待ちは、さすがにキレていいと思うぜアカ子さん」
「いいえ……、
わたしも、最近ひとを待たせることが多かったので」
「ん……(-ω-;)とりあえずあすかは罰としてドラ焼き抜きな」
「ドラ焼き……って、お礼のおみやげ、ですよね」
「食べなさいよあすかちゃん。たしかドラ焼き好きだったでしょ? ほら、高校入試の勉強教えてたときにーー」
「じゃあ、ひとつだけ、いただきましょうか」
「あらー、このドラ焼き、普通のお店じゃ売ってないのよ」
「そ、そうだったの!?」
「味の違いに気づかないお兄ちゃんが悪い(パクリ、とドラ焼きをほおばる)」
「もうひとついただきます」
(ぱくり。)
「もうひとつ」
(ぱくぱく。)
「もうひとついただいてもいいですか?」
(ぱくぱくぱく。)
「(º ⌓º )い、妹よ、おまえ、いってることとやってることが完全に乖離(かいり)してるぞ……」
「乖離(かいり)なんてことば、知ってたんだね、お兄ちゃん」
「お前もな」
「二字熟語は得意なの」
「あーそーですか」
「(´∀`*)ウフフ……」
「どうしたんですかアカ子さん」
「(´∀`*)仲がいいことはステキじゃないですか」
「わたしは…わたしは…アカ子さんのほうが、ステキだと思います」
「? (きょとん)」
<すたすたすたすた!
「お、おい食い逃げすんなバカあすか!!」
部屋に、
もどって、
よせばいいのに、
鏡で自分の顔を見た…。
わたしってなんでこうなんだろう。
アカ子さんってなんであんなに、あんなに、
キレイなんだろう。
窓に、自分の顔が映って、
思わずカーテンを乱暴に閉めたら、
カーテンが少し破れてしまった。
アカ子さんが裁縫が得意なことを、
破れたカーテンから連想で思い出し、
枕に突っ伏した。
押し入れがあったら、入りたいよ…。