回想
きょうの放課後
喫茶店『メルカド』
わたし
と
伊吹先生
『はい! なんでも好きなスイーツおごるよ、羽田さん』
『別々でいいです』
『(._."Ⅱ)』
『ど、どうしてそんなしょげるんですか』
『伊吹先生』
『なーに?』
『わたしこの学校入って正解でした』
『気づくの遅くない?』
『前から気づいてましたけどっ。
……でも、伊吹先生みたいな、いい先生、ほかの学校だったら出会えなかったと思う』
『(-∀-`)あらー💓』
『話は変わりますが』
『なぁに羽田さん』
『( ^_^ ;)中間テストの、わたしの成績が…その、かんばしくなかったから、声をかけてメルカドに誘ったんですか』
『鋭いわね。他の科目の先生が、「ちょっと羽田心配だぞ?」って』
『(- -;)はぁ…』
『でもさ』
『でもさ?』
『現代文のテストにしてもさー。
あたし採点してて、ウッソー! って思ったもん。
ふだんのあなたなら絶対間違えない問題で間違えてるんだもの』
『(ー"ー;)……、
現代文は96点でした』
『それが?』
『いじめないでください』
『ねえ、はなしは変わるけど』
『なんですか? 先生』
『(少し声量を落として)羽田さん、戸部先生のおうちに住んでるのよね』
『(ビックリして)知ってるんですか、アツマくんのお父さんのこと』
『卒論の参考文献で戸部先生の本を使わせてもらったの。
亡くなられたすぐ後のときだったかしら……、気の毒ね』
『元気ですよ。
アツマくんも、あすかちゃんも、ふたりのおかあさんの明日美子さんも』
『あなたがそばにいてくれるのもいいのよ』
『そんな、わたし支えられて甘えてばっかりで、わたしほんとにタダの居候なんですっ』
『そんなことないよ』
『根拠……』
『見つけられるよ、いつか、根拠。
人生は、現代文のテストの問題文とはちょっとだけ違うけど、さ』
『先生……。
先生、
『えw』
× × ×
『じゃあそろそろ帰ります』
『ちょっとだけ待って』
『はい?』
『これ。羽田さんにあげる』
『ファッション誌の切り抜き?』
『うん。武彦くん(←先生の旦那さん)の親戚の男の子が読んでたんだけど』
『ってことはメンズ向けじゃないですか。どうしてわたしに』
『アツマくんに買ってあげる服の参考にして』
『せ、せ、せんせい、もしかして、もしかして』
『知らないと思った? むしろ』
『降参です、先生』
『「どうしてわたしの気持ちがそんなにわかるんですか」とは言わないのね』
『(>_<;)……降参です、先生』
『おごってあげる♥』
回想終わり
わたしの部屋
「……(´Д` )ハァ、
なにやってんだろ、わたし」
「( - - *)ウトウト」
・・・・・・・・・
あれ?
わたしの肩に、「はらり」と薄い毛布みたいなものがかかった感覚。
「Σ(´□`;)ガバァ
あ、あすかちゃん?」
あすかちゃんが、いつの間にかそばに立っている。
「(´∇`)ダメですよー冷えますよー、クーラーしたまま居眠りは」
「あ、ありがとう。
冷えひえになったまま、朝を迎えるとこだった、」
「おねーさん。」
「?」
「( * ॑꒳ ॑*)۶"ナデナデ」
「!?!?」
無言で、
わたしの頭をなでてくれる、
あすかちゃん。
「……よしよし。
おねーさんは、いつまでもしょげてないって、わたし、わかるから。
ーー頼れる愛さんに、すぐ戻るから。
わたしたちを支えてくれる、愛さんに」
「(゚д゚;)説教タイム……」
「説教じゃないです、激励です。」
「ーー説教も激励も、いまのわたし、一緒くたになって受け止めてしまったりする……、んだけどw
ありがとう……。
ありがとう……あすかちゃん」
あすかちゃん、えらいね。
ひとつ年下だけど、
わたしのおねえさんだ。
あっ、
わすれてた、
もうすぐあすかちゃんの誕生日。
ついでに、伊吹先生も誕生日だ。