うちのお母さんは、
わたしのことを「あーちゃん」、
蜜柑のことを「みーちゃん」と呼ぶ。
「ね、ね、あーちゃん」
「何かしら? お母さん。
すごくワクワクしたみたいな表情で」
「あーちゃん、もしかして、
好きな男の子、できた?ww」
「と、とつぜんなんなのよ!!」
「さいきんウチに、ハルくん? って男の子、よく連れてきてるじゃないのんっ」
「ぎくっ」
「ーーそ、そんなんじゃないもん」
「(((o(*´∀`*)o)))どうかな~?」
「💢そんなんじゃないって言ってるでしょ!!
男の子の話はもうやめて!!!」
「(;´Д`)あ、あーちゃん」
お母さんのことなんか、
お母さんのことなんかーー、
お母さんとケンカしちゃったっ。
何年ぶり?
お母さんに怒鳴り散らすの。
反抗期なんて、
とっくに終わったと思ってた。
アカ子のへや
「(スマホを操作しながら)えっと……去年のバロンドールは、ルカ・モドリッチ、クロアチア代表…」
<ガチャァ
「は~い、おじょうさま~、洗濯物ですよ~~♫
ーーあれ、『ノックぐらいしなさいよ!』って、言わないんですね」
「サッカーのお勉強に夢中で」
「お母さんとケンカしたから、気を紛らすという意味合いもあるw」
「よ、よくわかったわね蜜柑w」
「何年ぶりの反抗期ですか、アカ子さん」
「う・る・さ・い」
「ーーアカ子さんの反抗期、けっこう激しかったですよね」
「あなたの反抗期もねーー蜜柑」
「うっ」
蜜柑の反抗期が、いちばん激しかったのは、
蜜柑が中学1年生のころだった。
それまで、お母さんの言うことをよく聴いていた蜜柑が、
お母さんを突き放すようになってしまって、
お母さんが戸惑っていた。
娘同然に育てていた蜜柑。
はじめて、思春期にさしかかる娘を持ったのと同じ状況。
ところかまわず怒鳴り散らす中学1年の蜜柑を、
わたしはかなり怖がっていた。
「でも……ある日突然、お母さんとまた仲良くなって、蜜柑の反抗期は終わったのよね。
蜜柑が中学1年のときの、ほんの短い期間の反抗期だった。
(イジワルな口ぶりで)なんで反抗期が突然終わったんでしょうねえ」
「『女同士だから、なんとなーくわかるけど』って言いたいんでしょ。
…お嬢さまのエッチ」
「せいちょう期だったもんね、蜜柑」
「そのせいちょうは、どんな漢字で書くんですか?」
× × ×
「ごめんなさいお母さん、さっきは取り乱してしまって、どなっちゃって」
「はい、あーちゃんは良い子ね」
「子供扱いしないで…」
「はいはい、男の子の話は封印したげる。
でもお父さんがどう攻めてくるかしら」
「ウッ」
「(ソファーにもたれて)あ~、なんだか、あーちゃんが中学に入るか入らないかのころを、思い出しちゃったw」
わたしの反抗期。
「まーあの頃はあーちゃんも(自主規制)ばっかりで(自主規制)も次第に(自主規制)って行くせーちょーきだったからねえ、
こころとからだのバランスが、ちょっとねw」
「お父さんいないからって深夜のAMラジオみたいな際どい話しないでよ」
「聴くの!?」
「たとえ…ってだけ」
「みーちゃんはさ、」
「わたしは蜜柑の反抗期のほうが壮絶だったと思うけど、」
「うん、家のモノ壊したりするからお母さん、困り果ててたりしてたんだけど、
ある日ーー明け方だったかしら。
みーちゃん、困り果てた顔で、お母さんに甘えたいみたいで、モジモジしてーー、
なかなか(自主規制)ってこと言い出せなくて、ほんとうに小声でわたしに耳打ちして。お母さんうれしかったから、ほら(自主規制)だから、思わずみーちゃんをハグしちゃって。でももうあの時、みーちゃんお母さんよりかなり背が大きくて、その時そのことに初めて気づいてーーほんとうの『母娘』にその時なれたんだなあ、って。
あのときのうろたえてるみーちゃん、可愛かったな~」
「(-_-;)それ以上は公共の電波に乗っけられないわよ、お母さん」
(-_-;)・・・・・・せーちょーき。