【愛の〇〇】文芸部の後輩と、読書バトル!?

放課後

久々の文芸部活動

 

羽田センパイ!

「なぁに? 川又さん」

 

川又(かわまた)ほのかさん。

高等部1年。

文芸部で、わたしにできた後輩である、

のですが……。

 

「世界史の授業で、中国の『科挙』について習ったんです」

「ああ、官僚の試験制度ね。

 ほんとに人が死んじゃうぐらい難しいっていう」

「それで、宮崎市定(いちさだ)っていうひとの『科挙』っていう本を読んでいるんですけど!」

「ですけど?」

 

 

科挙―中国の試験地獄 (中公新書 (15))

科挙―中国の試験地獄 (中公新書 (15))

 

 

「(本を突き出して)羽田センパイは、この本、読まれましたか?」

「読んでない(即答)」

「えっ……宮崎市定の名前は、知ってますよね…」

「もちろん。読んだことないけど」

「1冊も?」

「1冊も」

 

「あの…プライベートなことかもしれませんけど…」

「わたしがお邸(やしき)に居候してること?」

「そうです…大学の歴史の先生の家で…、

 戸部先生は、もう亡くなられたそうですけど…」

「わかったわかった、川又さんの言いたいこと。

 歴史の先生の家だから宮崎市定の本はいっぱいあるだろう、だから宮崎市定の著作を1冊も読んだことがないなんて信じられない…と」

「『信じられない』はオーバーですよ」

「そういや内藤湖南の本も読んだことないなーw」

「!?」

コナン・ドイルなら何冊も読んでるけどw」

 

 

「川又さん、わたし図書館じゃなくて、16歳の女の子なのよ。

 それに、著者のネームヴァリューにつられて本を読むのもよくないと思うわ」

「……たしかに、宮崎市定っていうビッグネームに引っ張られて、この新書を買ったのは、失敗だったかもしれません…」

ブックオフのシールが貼ってあるじゃないの、ブックオフって漫画だけ売ってるんじゃなかったのね」

「あ、あたりまえじゃないですか!! 高〇馬場のブックオフは掘り出し物が多いんですよっ」

 

「ーーで、失敗だったかも、っていうのは?」

「一言でいうと、つまらないんです。

 科挙の内容を時系列順に説明していくんですけど、情報を単調に並べているだけ…の、ような…気が、してくるんですよ」

「時系列、っていうのは?」

科挙にも段階があって、

  • 前段階の、試験勉強
  • 予備試験的な、『学校試』
  • 本試験の、『科挙試』 

という順番なんですけど、『学校試』と『科挙試』は更に細かく分かれていてーー」

「なるほど! のみこめた」

「さすがですねセンパイ」

「で、ぶっちゃけてその本、つまらないのよね?」

 

「………」

「(* 'ᵕ' )……」

「……京都大学での宮崎市定の講義って、この本みたいにつまんなかったんでしょうか……。

 知識をひたすら羅列していくだけのような印象です」

「川又さん、ちょっとその本、見せてくれる?」

「はい」

(パラパラ、とページを繰る)

 

「82ページまで読んだのね」

「あの、72ページからの『貢院にはお化けがでる』とかは、飛ばしました」

「なんで?」

「どうでもいいと、思って……」

「ふふ……読み飛ばすテクニックがまだまだね、川又さんw」

「どどど、どうしてですか?

 どういうことなんですか!?」

「『貢院にはお化けがでる』のところが、『どうでもいい』って、あなた思ったみたいね」

「(ムッとして)違うんですか」

どうでもいいわけないじゃないw

 小説みたいな読み方もできそうよ、この本。飛ばした部分も読んでごらんなさい。

 宮崎市定の文学的センスも、バカにできないものねw」

 

× × ×

 

は、はねだせんばい

「ん? どうしたの川又さん」

 

今度…馬場のブックオフに、一緒に行きませんか??

 

 

「( ゚д゚)ポカーン」