【愛の〇〇】「姉がいつも言っていました」

「利比古、コーヒー飲むか?」

「あ、いただきます」

 

× × ×

 

「それにしても身長伸びたなあー。成長期ってやつか」

「アハハ…アツマさんにはまだ、かないませんよ」

「身長?」

「身長もそうですけど、アツマさん、なんというかーー『どっしり』してるじゃないですか」

「?

 最近は、特別な筋トレとかしてるわけじゃないんだが」

「い、印象です! 全体的な印象のことで!!

 (´・ω・`)なんか…すみません」

「(利比古の肩を叩いて)えーのえーの!! ささいなことで恐縮すんなって、な!?」

 

「たしかに、知り合いが、おれのことを『たくましい』って言ってくれることは、あるらしい」

「『らしい』ってことは、が、だれかからアツマさんの評判を聞いたーーってパターンですか」

 

「……」

「……」

 

「さすがに鋭いなおまえ。愛の弟だけあって」

「(ガチガチになって)……」

 

「そんな緊張しなくてもええんよ。

 自分の家だと思え!!」

 

「…………あ、姉のアツマさんに対する評価が、変わったと思います」

「ヨーロッパにいても、わかるか?」

「はい。

 さっき、アツマさん、アツマさんの知り合いが『たくましい』って言ってくれることがあるらしい、って言いましたけど」

「うん」

姉自身がーー、ぼくとメールしたり、電話で話すときに、アツマさんのことを『たくましい』『頼りになる』って表現することが多くなりました。

『信頼できる』とか『助かってる』とか、姉がそう言うようになったのが、どうも去年の夏休みあたりから……」

 

「利比古。おれ、おじさんに、

『愛の支えになってくれ』って言われちゃったよ」

 

「!!」

 

「くやしいか?w」

「い、いいえ!」

 

「くやしいか、ってのは、冗談だ」

 

「でも、おれが愛について知らないことで、『役に立つ』じゃ変だなーー、お互いのーー、いや、『みんな』の『ためになる』ことを知っていたら、遠慮なく教えてくれ」

「『みんな』の、ですか…?」

「おれと愛の間柄だけじゃなくて、この邸(いえ)に住むみんなのためになる、ってことだよ。

 おまえも来年からはこの邸(いえ)の仲間になるんだしさ。

 住む人間だけじゃない。

 この邸(いえ)に関わる人間『みんな』のことをーーおれは、考えてる。」

 

「アツマさんはーー、

 アツマさんは、立派ですね」

「途中からただの理想論になってたけどw」

「でも、アツマさんみたいな立派なことを考えるひと、世の中からどんどん消えていってますよ」

「地球規模視点で?」

「地球規模視点で。

 万国共通で、立派に生きることを真面目に考えてる人って、ほとんどいませんよ」

「考えてるだけだったり、言ってるだけじゃ、なんにもならんけどな」

 

「姉がいつも言っていました」

「なんて?」

「『アツマくんは、どんなときも、

 有言実行だ』って。」