【愛の◯◯】伊吹先生から、意外な「クリスマスBlu-ray」

伊吹先生から、わたし宛に、クリスマスプレゼントが届いた。

 

クリスマス仕様の包装に……なんなんだろう、この箱? 

 

 

true tears 10周年記念 Blu-ray Box

true tears 10周年記念 Blu-ray Box

 

 

(; ゚д゚) え……わたしに、アニメのブルーレイディスク!?

 

「あ、手紙も入ってる」

 

「伊吹先生……汚い字w

 

メリークリスマス羽田さん!

 

あたしと武彦(たけひこ)くんからのクリスマスプレゼントです。

 

というよりも、これは武彦くんの、思い出のアニメなのね。

 

武彦くん、ぜんぜんオタクってわけじゃないの。

 

でもこのアニメだけは好きなんだって。

なんでも大学時代に、深夜にたまたま放送してたのを観たら、はまってしまったそうで。

 

いわゆる「深夜アニメ」ってやつ?

 

みんながウェブじゃなくてテレビでアニメを観ていた、最後の時期のアニメなのかもね。

 

あたしもアニメにはぜんぜん詳しくありません。

 

でもね、中学の同級生だったアニメファンの子が、こんなこと言ってた。

 

「監督が西村純二っていうんだけど、わたしが小中学生のころ、この監督が作ったアニメには『ハズレ』が多かった印象が強かったんだよなー。だから余計に、『こんな作品も作れたんだ』っていう驚きが大きかったんだ、true tearsが流行ってたときーー。」

 

 

ま、13話しかないし、頑張れば年越しまでには全部観られるし。

それに、このアニメ、秋から冬、そして春へと移り変わっていく季節の物語だからさ。

雪が降るのよ。

「制作会社が富山県にあるからだ」って武彦くん言ってたけど、こっち側で雪って珍しいよね。

 

「要領を得ない手紙……わたしと同じだ、伊吹先生、手紙書くの苦手なのね。

 でも、Blu-rayボックスってーーお値段高くないのかしら?」

 

 

『もしもし、羽田です』

 

『羽田さん、あのBOX、税抜だと10000円しないのよ』

『不気味なくらい安いような……』

『10周年記念、って書いてあったでしょ? 廉価版とはちょっと違うけど、なんだかんだで一昔前のアニメだし、ゴールデンタイムのドラマと同じで1クールしかやらなかったから、そういうことでリーズナブルなんじゃないかしら』

 

『でもいいんですか、わたしただの教え子なのに』

『だって武彦くん、true tears、BOXが出るたびに買ってるもんw』

『え』

 

 

 

「アツマくん、ブルーレイプレーヤーってあったよね?」

「あるけど。

 (わたしが持っていた『true tears』のBOXを見て)おまえ、それどこからーー」

「わたしの学校の先生から、クリスマスプレゼント」

「おまえアニメ一切観ないだろ」

「だけど、わざわざ贈ってくれたのよ?」

ピーエーワークスかよ……取り巻きがめんどくさいことで有名なんだよなその会社

「なんか今つぶやかなかった? 観たのこのアニメ」

「いいや、知らん」

あっやしい~

 

「おまえの部屋で観るのかよ。リビングのでかいテレビ画面で再生すればいいじゃねーか」

「集中して観たいの」

「律儀だな……」

「律儀なのは当たり前でしょ? 先生からのいただき物なのよ」

 

 

自室にブルーレイプレーヤーを持ち込み、早速第1話を再生した

 

まず、オープニング映像で、息を呑んだ。

 

絵が、キレイ。

 

たしか、アニメって、キャラクターと背景を描くひと、別だったはずだけど。

 

まず、人物の描き方が、なんというか、きめ細かい。

波止場の上空を飛んでいる鳥の描き方までもが、きめ細かい。

背景はーー「写実的」とはちょっと違う気がするけれど、とにかく「綺麗」としか言いようがない。

 

でも、「背景が綺麗だ」だけじゃあ、幼稚な感想だから、本編の映像を引き合いに出すと、

水彩画みたいなタッチで……おそらく、制作会社があるという富山県だったり北陸地方の風景に取材してるんだと思うけど、絶妙にマッチしていて、端的にいうなら「抒情的」、そんな背景美術。

 

ググったら、もうすぐ放映開始から、11年。

ほんとうにわたしが幼稚園児だったころのアニメなの、これ……!?

 

 

しかもこのアニメの本編、奇妙なくらい「静か」。

ヤマカンだけど、セリフの量が、相対的に少ないんだと思う。

テレビアニメって、もっとガヤガヤドタバタと五月蝿(うるさ)いイメージだったけど。

 

劇伴音楽の異化効果(いかこうか)もすごくて、たぶん北陸地方どうのこうのより、雪が多く降る土地の話だから、「雪」を主題にした劇伴なんじゃないかなーーなんというか、作品全体の「ひんやりとして、それでいてどこかあたたかい」世界観・空気感を作り出すのにいちばん貢献しているのが、音楽。

 

 

ただ、主人公の眞一郎くん、じぶんがモテ男なのに、それに気づいてない。

幼なじみの愛ちゃんーーまぎらわしいなーーに好意を向けられているのに、愛ちゃんも、三代吉(みよきち)くんも、どっちもかわいそうになってきちゃう。

乃絵(のえ)もいれば、比呂美もいるんだし、はじめっから3人の女の子から、眞一郎くんに向かって、矢印付きの線が伸びている……。

乃絵の言動は、まだよくわかんないけど。

 

比呂美。

あんなに髪長くて生徒指導でしょっぴかれないのかしら、という懸念はいいとして(だって腰のあたりまで伸びてるじゃないの、いまのわたしの髪型にわりと似てるけど比呂美と髪色違うしわたしが伸ばしてるのは背中までーー)、

比呂美、あまりにもこの娘(こ)美少女すぎて、いかにも、

綺麗なバラにはトゲがある

系のキャラクターだと思うんだけど、

性格は抜きにして。

 

比呂美、両親が亡くなっちゃって、眞一郎くんの家に身を寄せているのよね。

わたしがこの邸(いえ)ーー戸部邸に身を寄せているのより、ずっとずっとつらい事情で、身を寄せているのね。

さらに身を寄せた先で、眞一郎くんのお母さんにキツく当たられていそうで、いまでも、つらそう。

 

眞一郎くんのお母さん、明日美子さんと、まるで正反対…w

わたしのお母さんに近い……かも。

いや、ごめんね、お母さん。

ちょっとだけ眞一郎くんのお母さんに近い雰囲気があるって思っただけ。

眞一郎くんのお父さんは、いかにも人格者! って感じで、まるで、わたしのお父さんみたいな安心感を与えてくれる。

 

 

 

あれ……?

(゜o゜;)わたし、まるで比呂美のような……?!