回想・おれん家(ち)でのこんな一コマ
とある岩波文庫のとある詩人の作品全集を、ホットカーペットに寝っ転がりながら、一心不乱に読んでいたら、昼のおひさまがサンサンとさしてきて、 ソファで(((´-ω-`)))ウトウト…と眠っていた愛が起きてきた。
おれ「おはようー」
愛「笑っていい◯もの増刊号も終わるような時間帯に起きちゃった」
おれ「その番組、とっくに番組自体が終わってるぞ」
愛「∑(*'д'*)ハッ!
ねぼけてた」
愛「おなかすいたから昼ごはんつくってくる」
おれ「ずいぶん旺盛だな」
愛「主語を省略しなさんな」
おれ「主語?」
愛「『食欲』!!」
愛「あ、あれ!?
( ゚д゚)アツマくんが西脇順三郎なんて読んでる!!」
おれ「(;´Д`)な、『なんて』とはなんだ『なんて』とは!!
(;´Д`)おれが詩集読んじゃマズいか?!」
愛「ぜんぜん」
愛「わたしが昨晩このテーブルに放(ほ)ったらかしにしてた本じゃないの」
おれ「珍しくないか? おまえはもっと本を大事にするイメージがあるぞ」
愛「カーペットに投げ捨ててたわけじゃないでしょお!?」
おれ「(^o^;)いやそんなことおれもしねぇよ」
愛「買った本でも汚損(おそん)しないのがわたしの信条だし、じじつ、その『岩波西脇(いわなみにしわき)』、表紙とか、カバーが汚れてるわけでもなんでもなかったでしょ」
おれ「たしかにそうだった」
おれ「(・_・ )まぁ、『買った本』っていっても、『親御さんからの読書用おこづかいで買った本』なんだけどな」
愛「( >_<)余計なことばを長々と継ぎ足さないでよ!」
おれ「(愛にポカポカポカ……と叩かれつつ)『えてるにたす』っておもしろいタイトルだな。この詩人の造語か?」
ポカポカポカ……の手を止めた愛「(眼を見張り)も、もうそこまで読んだの、アツマくん!?」
おれ「ああ、読み飛ばさずに」
愛「(; ゚д゚)」
ホットカーペットに正座した愛「ーーてっきりアツマくんはさいしょの『ambarvalia(あむばるわりあ)』で挫折するとおもっていましたごめんなさい」
語り始めやがった……、昼めし作るんじゃなかったのか。
こうなるともうクッキングどころじゃなくなる。
愛「『ambarvalia』、『あむばるわりあ』、『旅人かへらず』、『近代の寓話』、『第三の神話』、『失われた時』、『豊穣の女神』、
『えてるにたす』の前にこれだけ作品あるのよ、たとえ抄録(しょうろく)とはいえ。
ほんとに『豊穣の女神』まで午前中だけでたどり着いちゃったの!?」
おれ「『旅人かへらず』はしんどかったな。読んでいていちばん面白かったのは、『旅人かへらず』よりあとから、かなあ?
『第三の神話』とか、さ」
愛「ほんとに320ページも読み進めちゃったんだ」
おれ「やれやれ、うたぐりぶかいなあー」
愛「アツマくん、もしかして、読むの速い?!」
おれ「ん?
速読能力とか、そういうのじゃなくってさ……、集中力で、320ページも読めちゃった、ってことだと思うぞ」
愛「(;´Д)それ、『時間を忘れて読んでる』ってことだよ、まるで恍惚(こうこつ)……」
そこまで言うか。
愛が自分の部屋から『現代詩文庫』シリーズの『西脇順三郎詩集』を持ってきた
愛「いちおう、持ってるってだけだけどね。
実を言うとわたしは西脇の良さがわかんなくて」
おれ「だろうと思った」
愛「(´・_・`)うん……」
おれ「(愛が持ってきた『現代詩文庫1016』をまじまじと見て)ふーん、西脇順三郎、こんなおじいちゃんだったんだ」
愛「とっくに死んでるわよ」
おれ「わかってるよ!」
愛「(ボソッと)西脇は晩年の詩集になればなるほどわからなくなる……」
おれ「『人類』とかか?」
愛「それが最後の詩集ね」
おれ「(今度は岩波文庫のほうに戻って)漢字二文字シリーズってところか、おまえが言う『晩年の詩集』は。
ふーん。
もちろんおれはこの岩波文庫を最後まで読んでないし、」
おれ「この西脇順三郎ってジイさんの『晩年』がどこからどこまでーー、ってのは、わかんないけどさ」
愛「だからもう死んでるから」
おれ「死んでるのはわかってるよ」
おれ「ともかく、おまえの意見とはぎゃくに、死に近づくにつれ、おれにとって『良い!!』『オモロい!!』っていう作品が増えていく気がするなあ」
愛「西脇順三郎の、最期の詩に向かうにつれて、西脇の最期の詩に向かっていってーー、ってこと?」
おれ「そう! 予感でしか無いけど」
愛「(;´∀)ふ、ふーん。
めずらしい嗜好ねアツマくんは」
おれ「そうでもなくね?」
愛「わ、わたしの周りには『西脇いうほどでもない、西脇ショボい』っていう人間が多いので」
おれ「ふーん。おれ的には『そうでもなくね?』って言いたくなっちゃうけどな」
愛「(;´∀)で、でもあなた、今朝はじめて西脇読み始めたんでしょ」
おれ「だからかもしれん」
愛「(;´∀)……。
西脇は、慶應の英文科の先生だったのよ」
おれ「(^o^)ほぉ!
おれ記念受験も勿体ないから、慶應に出願する気もハナっからないんだけどさ、
慶應でないにしても、英文科がある文学部を狙おうかな」
愛「( ・_・)そういう文学部、多いよ」
おれ「なんとなくわかる」
・
・
・
そして。
そしておれは、
その日のうちに岩波文庫緑130-1『西脇順三郎詩集』を読了し、
英文学が勉強できる首都圏の大学を片っ端から調べ始めた。
2018年12月17日(月)
昼休憩の教室にて
藤村「珍しい。『オセロー』のほかにこんな本まで戸部のカバンから出てきた」
おれ「ああ。
これは愛から譲ってもらった本なんだ」
藤村「(;´Д)ってことはーー」
おれ「所有権はおれにある」
藤村「マジかぁ……」
おれ「ああ。
(裏の西脇順三郎の写真を藤村に見せて)
ひょうきんそうなジイさんだろ?」