【愛の◯◯】ハムエッグ、ハムレット、そしてーー

水曜日の朝

食卓

朝食当番の愛は、ハムエッグを作ったのだが……?

 

愛「!!

 

愛「そ、そういえば、昨日の夜、アツマくん……、

 どーゆーこと??? (・_・;)」

 

 

 

 

えーっと、おれゆで卵食べられない(*_*;

 

 

愛「(フライ返しを差し向けて)なんでゆで卵食べらんないのに、目玉焼きハムエッグは食べられるのよ?

アツマ「(意に介さず)それを話すと学校に遅刻してしまう」

 

見ると、目にも留まらぬ速さで、アツマの皿から、ハムエッグがほとんど消失している。

 

愛「せっかく作ったのに、早食いすぎ。(ボソリと)」

アツマ「ごちそうさま

愛「(フライ返しをぶんぶん回して)もうちょっとよく噛んで食べなさい!?」

アツマ「女子高生が母さんみたいなことゆーな」

愛「なんだとぉヽ(`Д´)ノプンプン

アツマ「(わざとらしく)しっかし、愛の料理は、毎朝おいしいなあ~!!

愛「えっ(きょとん)」

 

アツマ「(微笑んで)ありがとよ、毎朝。」

愛(嬉しすぎてどうリアクションしていいかまったくわからない

 

 

アツマ(そういえば、いつから愛は戸部家の朝食当番になったんだっけーー?

 こいつがすこぶる早起きだからか?

 いや、こいつの家事スキルが高すぎて、必然的かつ結果的に毎朝……)

 

アツマ「まあいいや。

 愛に感謝しないといけないことはいろいろあるからな」

愛(嬉しすぎて立ったまま微動だにできない

 

流さんの援護射撃「ほんとうにそうだね。

 いつもありがとう、愛ちゃん^^」

 

愛の体温が朝から急上昇していってしまう

 

 

 

 

アツマ「(制服の襟を軽く正して)あ!

愛「Σ(;*_*)ナニ!? びっくりするじゃない、とつぜん」

アツマ「ハムエッグといえば」

愛「はぁ!?」

アツマ「おまえのハムレット、かってに借りてるんだった、ワリぃ」

愛「(*_*;ガクッ!!!!!!」

 

 

 

シェイクスピア全集 (1) ハムレット (ちくま文庫)

シェイクスピア全集 (1) ハムレット (ちくま文庫)

 

 

愛「ああ、松岡和子さん訳のちくま文庫ハムレット』のことね・・・(^_^;)

 テーブルについ置いてけぼりだったのが、なくなってたと思ったら(^_^;)」

 

 

愛「読める? シェイクスピア

 

アツマ「細かいことはわからんが、そういうことはすっ飛ばして読んでも、これが面白くてさあ、続きが気になって手と眼が離せないんだよw

愛「ほんとう!?」

アツマ「ほんとうだよ」

愛「(コホン、と咳払いし)ま、まぁ、シェイクスピアが読者をグイグイ引っ張っていくパワーは、やっぱり英国の文豪だけあって、ずば抜けているからね。

 

 あんがい、アツマくん、英文科とかに向いているのかも。

アツマ「(真顔で)なるほど」

愛「・・・・・・」

 

アツマ「で、この『ハムレット』、まだ借りててもいいんだな」

愛「ぜんぜんOK。でも読み切ってね」

アツマ「読み切ることができねーってことはないよww」

 

 

愛(そうか……)

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日・木曜日

アツマの高校

の教室

の昼休憩

 

藤村「(横から)今日、戸部弁当なの?」

 

ウッ・・・・・・(;´Д`)

藤村。

いやなやつに引っかかった。

 

藤村「めずらしーい!

 彼女に作ってもらったんでしょ? (・∀・)ニヤニヤ」

アツマ「ばばばばばか藤村ぁ(;´Д`)」

 

同級生A太『まじで!? アツマに彼女?』

同級生B助『衝撃・・・!』

同級生C男『おーい、戸部に彼女できたらしいぜ!!!!!!!』

 

同級生D美(♀)『(興味津々に)ほんとー、戸部くんに?』

同級生E奈(♀)『どんな娘どんな娘? ねーねーおしえてww』

 

藤村「(両手を広げて)あのね、戸部とひとつ屋根の下に住んでる娘なの」

アツマ「ああああああああああああ(;´Д`)」

 

終わった・・・・・・( ;∀;)

 

『まじかよ!?』

『詳しい説明しろよ戸部!』

『年下なの!?』

『マジで!? あんな名門のお嬢様と、戸部が・・・』

『おい! この卵焼き、死ぬほどうめえぞ!!!!!』

『ほんとだ!!!!! こんな美味い卵焼き今まで食ったことがねえ!』

『ねぇ、戸部くん!! 絶対離しちゃダメだよ、こんなに料理も上手で名門校で成績優秀の完璧美少女!!!!!!』

 

 

教室じゅうが、いや、教室の外までもが大騒ぎになってしまった。

 

『おい写真見せろアツマ!!!!!!!』

『しかもピアノ弾けるんでしょ!? そんなパーフェクト美少女ほんとに実在ーー』

 

 

急に険しい表情になり、机の両サイドを握りしめるアツマ。

 

藤村「ど、どうしたの、戸部!? (゜o゜;)

 ほんとにすごいよ愛ちゃん。こんなお弁当一朝一夕には作れないってーー」

 

アツマ「(重苦しい口調で)ピアノのことは・・・・・・

 いま、ピアノのことは言わないでやってくれ、頼む!!

 

 

 

静寂。

 

 

机に額をくっつけるアツマだったが、

 

藤村「(しょうがないなあ、といった表情で)また愛ちゃんに何かあったのね。

 なんでもっと早く言ってくれないかなあ。」

アツマ「く・・・・・・」

 

藤村「(しょうがない感じで、しかし確かな微笑で)相談にのるよ、戸部。

 わたしでよければ」