孤独の文学少女(前編)

わたしは文芸部に入った。

 

文芸部に入るとき、心に誓ったこと。

それは、「上から目線にならない」ということだった。

 

伊吹先生の授業で、「文学史クイズ」に全部自分が答えてしまったことの、反省。

 

つまり、知識をひけらかさないこと。

他の部員をバカにするような不用意な発言を慎むこと。

 

もちろん、上級生の文芸部員だって沢山いるわけだしーー。

 

 

顧問である伊吹先生は、「他の部員に気を遣わなくてもいいよ」と言ってくれた。

 

でも、細心の注意は、はらっている、つもりだ。

 

文芸部の活動時間が終わって、帰るだけになった。

 

不用意な発言、先輩たちに対して、してなかっただろうか・・・・・・。

 

羽田さん!!(≧▽≦)

「い、伊吹先生、お疲れ様です」

 

「ねえ、羽田さんってさ」

「はい・・・・・・」

「ぜっったい、速読派でしょ」

「どうしてですか(^_^;)」

「ほら、沢山の本を読んでいると、読むのが速くなるって言うじゃん(≧▽≦)」

それ、根拠ないですよ

「(;≧▽≦)」

「わたし、むしろ、本を読むスピード、遅いと思うんです、他人と比較したわけじゃないけど・・・・・・」

「で、でも、『1日1冊』ペースだと、読む速さが1ページ1分だとしたら、300ページの本を、300分、つまり5時間かけて読まないといけないじゃん(;;≧▽≦)」

あ、わたし、だいたい1ページ1分ペースです

「(;;≧д≦)」

 

「羽田さん、睡眠時間、削って本読んでるの!? (;´Д`)」

「あ、家に帰ってからぶっ通しで5時間読むとか、そんなわけじゃないですよ。

 行き帰りの電車とか、休憩時間とか、ほら、『スキマ時間』って言うんですか? そういった時間を、有効活用するようにしています。

 もちろん、授業中は内職で本読んだりは、一切していませんよ(^o^)」

 

「つ、つよい、羽田さん、つよい(゜o゜;」

 

伊吹先生に、ごきげんよう、と挨拶したわたしは、ガーデンの前を通って帰宅の途につこうとした。

 

すると、ガーデン付近のベンチで、読書をしている子を見つけた。

 

つい、わたしは、その子が何の本を読んでいるかが気になって、そのベンチに接近してしまった。

 

「・・・・・・(゜o゜;;)

 は、ハイデガーの、『存在と時間』!?」

 

 

 

存在と時間〈上〉 (ちくま学芸文庫)

存在と時間〈上〉 (ちくま学芸文庫)

 

 つづく。