クリスマスプレゼントは愛の原点

・クリスマスの朝ーー

 

 起きて、部屋から出ようとした愛だったが、ドアを開けると、足元に何か包みが置いてある。

 

愛「これは……もしや(;・∀・)」

 

× × × × ×

 

愛「ちょっとちょっと」

アツマ「なに」

愛「( ^ω^)」

アツマ「なに、その満面の笑みは」

愛「これ! これ、あんたが置いたんでしょww」

 

 

 

アツマ「(頭をポリポリかきながら)おれと流さんがカネを出し合って買ってきたんだよ。ほとんど流さんのカネで買ったんだけど。

 大変だったんだぞ。それ(旧版)はリライトされる前のやつだったから、新刊書店に出回ってないんだよ。ブックオフを何軒もはしごしてーー」

愛「それはごくろうさま。ありがとう」

アツマ「・・・・・・」

愛「なにか」

アツマ「あの、手紙というか、反省文も、添えておいたんだけど……」

愛「フフフフフ」

アツマ「読んだ?(;´Д`)」

愛「あはははははははっ!! 読んだわよwwwwもちろんwwwあんた字がほんと汚いわねwwww」

アツマ「うるさいなあ(-_-;)」

愛「わたしも大人気なかったから」

アツマ「おまえまだ15歳だろ。流さんがいちばん大人だったよ、今回は」

 

 

愛「流さん、『クリスマスプレゼント』、ありがとうございました」

流「いやいや。

 アツマには話してたらしいね、きみが、読書に目覚めるきっかけが、はやみねかおるの『夢水清志郎』シリーズと、松原秀行の『パスワードシリーズ』だったって」

愛「小学校低学年のときです」

流「それはずいぶん早いな。中高生の読者もたくさんいるようなシリーズだそうじゃないか」

愛「でも、挿絵があるし、ルビもたくさんふってあるんで、読みやすかったんです」

 

愛「わたし、いくら読書に興味を持ってくれって促しても、読む本がつまらなかったらダメだと思うんです」

流「アツマにも読ませたの?」

愛「いいえ、だって児童文学をすすめたら、彼のプライドが傷つくと思って」

 

愛「でも、松原先生とはやみね先生の作品は、わたしの原点です」

流「講談社青い鳥文庫は、もう少しまじめな作品もあるし、他のシリーズもあるよねーー『クレヨン王国』だったり『若おかみは小学生!』だったり」

愛「なんでだったんでしょうね。でも講談社も、むかしは夢水清志郎とパスワードを青い鳥文庫の2枚看板として推しだしていたじゃないですか」

流「そうだったね」

愛「わたし、絵本が嫌いだったんです」

流「へえ、変わっているね」

愛「『いやいやえん』とか、いかにも幼児に親が読ませそうな本も苦手で」

流「じゃあ、幼稚園のときは、さほどーー」

愛「絵本を読まされていたけど、読書はあんまり好きじゃなかったんだと思います」

 

愛「で、心配した親が、書店にわたしを連れて行って、直観で買う本を選ばせたんです」

流「小学校に入ってから?」

愛「そうですね。そしたら、青い鳥文庫の棚から、『パスワードは、ひ・み・つ』と『そして五人がいなくなる』を持ってきたそうなんです」

 

 

パスワードは、ひ・み・つ―パソコン通信探偵団事件ノート〈1〉 (講談社 青い鳥文庫)

パスワードは、ひ・み・つ―パソコン通信探偵団事件ノート〈1〉 (講談社 青い鳥文庫)

 
そして五人がいなくなる 名探偵夢水清志郎事件ノ-ト (講談社青い鳥文庫)

そして五人がいなくなる 名探偵夢水清志郎事件ノ-ト (講談社青い鳥文庫)

 

 

流「この2枚看板のうちで、たとえばどちらか一方を選ぶとすれば?」

愛「夢水清志郎のほうが人気はあるんですけど、わたしはパスワードのほうを選びますね」

流「ほお」

愛「判官びいきもありますけど、『パスワードで恋をして』なんて感動しちゃって、いまでも半年に一度は読み返すんです」

流「それは意外だな。いまのきみが児童文学を読むなんて想像つかないよ」

 

パスワードで恋をして -パソコン通信探偵団事件ノ-ト(8)- (講談社青い鳥文庫)

パスワードで恋をして -パソコン通信探偵団事件ノ-ト(8)- (講談社青い鳥文庫)

 

 

愛「そこは想像力を働かせてくださいよw 作家志望なんでしょう?」

流「きみは本を書く気はないのかい」

愛「全然」

流「『謎』だなあw」