ども。
青島さやかです。
新学期。
ーーといっても、初日なので、半日で終わり。
先日、アカ子に「新学期初日に、そっちの邸(いえ)にお邪魔してもいい?」と訊(き)いたら、こころよく了承してくれた。
「もっとアカちゃんと遊んであげなよ」と、愛にも言われていたし。
というわけで、アカ子とふたりで、学校からアカ子邸へ。
× × ×
「おじゃまします」
「はいどうぞどうぞ、さやかちゃん」
「あら、さやかさん、あけましておめでとうございます」
(しょっぱなから蜜柑さんと遭遇してドギマギするわたし)
「あっあけましておめでとうございました」
(蜜柑さんの微笑み。)
「さやかちゃん、おもしろいw」
「お嬢さま、からかったりしたらダメじゃないですかw」
「(--;)」
「すぐにメイド服に着替えてきますので」
「Σ(・・;)」
「さやかちゃんを待たせないようにね」
・蜜柑さんがメイド服姿で降りてきた
「はい、お待たせしました」
「なんだか、気合い、入ってますね、蜜柑さん」
「気合い!? 気合いですか!?」
「(どぎまぎと)いや…その、服装が、ですね……」
「ああ。
わたしはメイド、なので」
「でも!」
「新年なのでねえ。
気持ちを引き締める…というよりも、
さやかさんのことばをお借りすれば、気合い一発! ってところですかねww」
そういえば……
きょうの蜜柑さん、
いつにもまして、
肌ツヤが良い。
「さやかちゃん、じゃあ、やりましょっか?」
「そーね。やっちゃいましょ」
「?」
「蜜柑、さやかちゃんは、『これ』のために、あなたがメイド服に着替えてくるのをわざわざ待っていてくれたのよ」
「ちょ、アカ子、そんなんじゃないよっ」
「??」
「(バイオリンを見せて)蜜柑さん、『これ』ってのは、こういうことです。
アカ子のピアノと、合奏しようと思って」
「! 素敵ですねえ!!」
「この合奏のために、さやかちゃんはわざわざ学校までバイオリンを持ってきてくれたのよ。感謝しなさい蜜柑」
「や、蜜柑さんのためでも…あるけど、言い出しっぺがわたしだったから…というよりも、じぶんがバイオリン弾きたかっただけなんです蜜柑さん(しどろもどろ)」
「さやかさん、」
「(・・;)はい」
「ひとつアドバイスです」
「(・・;)はい?」
「もう少し堂々としたほうが、男の人は落としやすいですよww」
「落としやすい?
落とす、ってーー、
あ、
ーーーー、
(動揺してバイオリンを持つ手が震えるわたし)」
「蜜柑💢」
× × ×
「(気を取り直して)ーー始めようか、アカ子」
「そうね、さやかちゃん。
蜜柑は黙って聴いておくこと。
演奏会と同じよ。
じっとしておきなさい。」
ーー(^_^;)蜜柑さんを、まるで調教してるみたい…。
♫演奏♫
× × ×
演奏終了後、
昼ごはん食べたり、アカ子と遊んだりして過ごしたが、
少しばかり、省略。
何を食べさせてもらったか、アカ子と何して遊んだかは、
秘密にしておく。
ーー知りたい?
知りたいですか?
ーーもとい、おまちかねのティータイム。
寒いので、暖房がきいた屋内で。
「(紅茶をカップに注いで)はいどうぞ、さやかさん」
「ありがとうございます、いただきます」
「カタくならなくてもw
こぼれちゃいますよ?w」
「…火傷(やけど)しないようにします」
「わかります、わたし猫舌なんですよー」
「ほんとうですか!?」
「別の意味でヤケドしたこともそういえばあったかしらw」
「えええっ…」
「蜜柑💢 さやかちゃんがドン引きじゃないのっ💢」
「そ、そういえばアカ子……」
「どうしたの?」
「あなたちょっと疲れてるでしょ」
「やっぱり気づかれちゃった……
でも、どこでわかったの……?」
「ピアノよ。ピ・ア・ノ。
微妙に精彩を欠いてたから、きょうのあんたの演奏」
「(肩を落として)
ーー正月疲れだわ。
さすがに、ね。
あわただしさも、ここまできわまったら」
「でも昨日ハルくんと神社でツーショット写真撮ったんでしょ」
「しゃ、写真だけ撮って帰ったんじゃないのよ!?
ちゃんと初詣したんだからっ」
「それで疲れたんじゃ~ん!ww」
「(動揺を隠せず)は、初詣の段階では、まだ疲れてなかったから」
「どっちがリードしてたの?」
「リード?????」
「あんたのほうがハルくんを引っ張ってたのか。
それともその逆だったか。
ほら、力関係的に、あんたのほうが強いって聞くじゃないの」
「どこからそんなこと聞いたの、愛ちゃんから?」
「愛だけじゃないよ~ん」
クスクス…と笑う蜜柑さん。
無理もない。
「(うつむき気味に)……きのうは、
途中までは、わたしのほうが強くて、リードしてたけど、
最後の最後で、逆転負けだったわ」
「意外な結果になったわけだ」
「そうね…。
クリスマス・イブに、あすかちゃんのライブに行ったときは、完全にわたしのほうが彼を引っ張っていて、大差でリードしていたのに。
悔しいわ。」
「くやしがることないよ」
「えっ!?」
「彼も…成長してるってことでしょ」
「たしかに……」
× × ×
しだいにウトウトとしてくるアカ子。
消耗を隠せない。
ふらふらとなって、ティーセットに頭をぶつけたりした。
お嬢さまっぽくない、アカ子の隠れた一面が、垣間見られて、
楽しい。
「いけないわ、いけないわ、紅茶を飲んだのに、なんでこんなにまぶたが重たいのかしら」
「そんだけ疲れてるってことだよ」
「いけないわ、いけないわ、」
「『いけないわ』って4回言ったw」
「ごめんなさい、
しだいに語彙が、
ひんじゃくに、
…、
…、
(ふにゅう、と、わたしにからだを密着させる)」
ついにわたしに密着してきた。
というか、
眠くてどうしようもなくって、
寝落ちしちゃったんだねww
「あらあら」
「…寝かせてあげましょう、蜜柑さん」
「そうですね。
ふにゃっとなって、かわいいww」
「そんなこと言ってもいいんですかw」
「いいんですよ!w
…アカ子さん、
きのう神社で、お願いしたんですって、」
「なんて?」
「『ハルくんが、ケガしませんように』って」
「へぇ~っ。
ちょっとわたし、感動しちゃいました。」
「感動的ですよね。
アカ子さんらしいお願い。
けなげねぇ、アカ子さんもw」
「ズバズバ言いますね、
寝てるからいいけどw」
「ほんとのことを言わないとかえって失礼ですから」
「いい関係ですね……」
「そうですかあ?」
「よし、
わたしも今年は、アカ子に遠慮しないようにしよう」
「そうしてください、ビシビシと!」
「(^_^;)……言い過ぎかも。」